2025.09.21
アレルギー表示はどう変わった?食品選びの新ルールと実践の工夫
食品表示と制度の話

「卵や小麦が入っていないか心配」「アレルギー表示が細かくてよく分からない」─そんな声に応えるように、食品のアレルギー表示ルールはこの数年で大きく見直されました。
2020年の食品表示法完全施行を皮切りに、よりわかりやすく、安全に選べる仕組みへと進化しています。
ここでは、変更のポイントと背景、そして日常で役立つチェックのコツを、管理栄養士の視点で解説します。
なぜ見直されたのか:誤認や見落としのリスクを防ぐため
これまでのアレルギー表示には、「書かなくてもよい食品」や「分かりにくい原材料名」が存在していました。
たとえば、マヨネーズやパンには卵や小麦が含まれていても、「入っていて当然」という理由で表示が省略されることも。また、脱脂粉乳やホエイなど、専門的な原材料名だけではアレルゲンを見落とすケースもありました。
こうした背景から、誰が見ても一目で分かる表示を目指して制度が整備されたのです。
すべての加工食品でアレルゲン表示が義務化
以前は「特定加工食品」という例外ルールがあり、「入っていて当然」とされる食品ではアレルゲンの表示を省略できました。しかし現在はこの制度が廃止され、すべての加工食品で、アレルゲンが含まれる場合は表示が必須になっています。
この改正は2015年の食品表示法制定時に盛り込まれ、2020年4月から完全施行されました。家庭でよく使う調味料や加工食品にも適用され、より確実に確認できる仕組みになっています。
「一括表示欄」でアレルゲンを明確に再掲
パッケージの裏面などにある、原材料や添加物をまとめた部分が「一括表示欄」です。2020年の法改正では、この欄の中でアレルゲンをかっこ書きで再掲するルールが義務化されました。
たとえば、以前は「脱脂粉乳」とだけ記載されていましたが、現在は「脱脂粉乳(乳成分を含む)」と表記され、乳アレルギーを持つ人でも一目で確認できます。
この仕組みによって、
- 専門的な原材料名やカタカナ表記でも、すぐにアレルゲンだと分かる
- 「玉子」「エッグ」「卵」など表記が異なっても、「(卵を含む)」と統一的に表示される
というメリットが生まれました。
つまり、どの原材料にどんなアレルゲンが含まれているかを一目で判断できる表示へ改善されたのです。
義務・推奨表示の最新動向
アレルギー表示は、義務表示(特定原材料)と推奨表示(特定原材料に準ずるもの)の2段階に分かれています。
義務表示(特定原材料)では、卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生の7品目に加え、2023年(令和5年)3月に「くるみ」が新たに追加されました。全面的な表示義務化は2025年(令和7年)3月31日からとなります。
一方、推奨表示(特定原材料に準ずるもの)は、もともと21品目でしたが、2021年9月に「アーモンド」が追加されて22品目に。さらに2024年3月には「マカダミアナッツ」が加わり、同時に「まつたけ」が削除されました。現在は23品目体制です。
こうした改正は、消費者庁が毎年公表するアレルギー発症事例のデータをもとに行われています。
特にナッツ類による重篤な症例の増加を受け、対応が強化されました。
2025年時点の対象まとめ
義務表示:卵・乳・小麦・えび・かに・そば・落花生・くるみ
推奨表示:あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・豚肉・やまいも・りんご・もも・バナナ・ゼラチン・アーモンド・マカダミアナッツ など
実生活で役立つ表示チェックのコツ
- 表記ゆれを意識する
卵=玉子、えび=海老など、別表記を知っておくと見落としにくくなります。 - “いつもの商品”でも毎回確認を
リニューアルや製造ライン変更で、原材料が変わることもあります。 - 不明なときはメーカーへ確認を
推奨表示は任意のため、省略される場合も。疑問があれば公式窓口で確認を。 - コンタミネーション表示もチェック
「本品製造工場では○○を含む製品を生産しています」とある場合、微量混入の可能性があります。
正しく知ることが、安心につながる
アレルギー表示制度の進化は、「誤って食べてしまうリスク」を減らすための大切な取り組みです。
制度の背景を知り、表示を読む力を身につけることで、安心して食品を選ぶことができます。
日々の買い物で、まずはパッケージ裏の「一括表示欄」を確認する習慣から始めてみましょう。