2025.08.04
野菜が足りないと何が起きる?毎日の食卓で無理なく増やすコツ
働く人と食の健康
栄養の基本
夕飯の献立を考えるとき、「今日も野菜が少なかったな」と、ふと罪悪感を覚えることはありませんか。体にいいとわかっていても、忙しい日が続くとどうしても後回しになりがちです。
でも、野菜が不足している状態が続くと、体は少しずつサインを出し始めます。便秘や肌荒れ、なんとなくだるい。そんなちょっとした不調の背景に、野菜不足が隠れていることも珍しくありません。
ここでは、野菜を摂ることで体の中で何が起きているのか、そして忙しい毎日でも無理なく取り入れるための工夫を、管理栄養士の視点からお伝えします。
野菜不足は意思の弱さではなく、暮らしの構造が生んでいる
「野菜をもっと食べなきゃ」と頭ではわかっていても、なかなか実行に移せない。それは意思が弱いからではなく、現代の暮らしそのものが野菜を摂りにくい構造になっているからです。
外食やコンビニ食は手軽で便利ですが、主食と主菜が中心になりがち。野菜は「あれば嬉しい」くらいの位置づけで、意識しなければ自然と不足してしまいます。
厚生労働省が掲げる「健康日本21(第三次)」では、成人の野菜摂取目標量を1日350g以上としています。ところが、令和4年の国民健康・栄養調査によると、実際の平均摂取量は男性277.8g、女性263.9gと、目標には届いていません(※1)。
さらに、「下ごしらえが面倒」「何を作ればいいかわからない」といった心理的なハードルも重なり、野菜を後回しにする習慣が定着しやすくなります。
つまり、野菜不足は個人の問題というよりも、“暮らしの流れ”から自然に生まれてしまう結果ともいえるのです。
野菜が体の中で果たしている3つの役割
では、野菜を食べることで、体の中ではどんなことが起きているのでしょうか。ここでは、代表的な3つの働きを整理してみます。
1. 食物繊維が血糖値や脂質の吸収をゆるやかにする
野菜に含まれる水溶性食物繊維は、腸の中でゲル状になり、糖や脂質の吸収スピードをゆるやかにしてくれます。食後の血糖値が急上昇しにくくなり、コレステロールの吸収を抑える働きも期待できます。
食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」が注目されているのも、このメカニズムがあるからです。
2. 腸内環境を整えて、免疫や肌の調子にも影響する
野菜に含まれる不溶性食物繊維は、腸の動きを促し、便通を整える働きがあります。水溶性食物繊維と合わせて摂ることで、腸内の善玉菌が育ちやすい環境をつくれます。
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、免疫機能の約7割が集中しているといわれる器官。腸の状態が整うと、肌の調子や気分の安定にもつながりやすくなります。
3. ビタミン・ミネラルが体のあちこちを守っている
緑黄色野菜に多いβ-カロテン(体内でビタミンAに変換)は、粘膜や皮膚の健康を保つのに欠かせません。ビタミンCは抗酸化作用があり、葉酸は赤血球の生成を助けます。
これらは体内で合成できないか、合成量が十分でないため、食事から継続的に摂る必要があります。野菜を食べることは、体のあちこちを“静かに守る”行為なのです。
1日の流れで見る野菜の増やし方
「野菜を350g」と言われても、どこから手をつければいいかわからない。そんな方のために、1日の流れに沿った取り入れ方をご紹介します。
朝は「入れるだけ」で1品プラス
忙しい朝に調理の手間は避けたいもの。味噌汁に冷凍ほうれん草を加えたり、目玉焼きの横にミニトマトやブロッコリーを添えたりするだけで、朝から野菜を摂る習慣が始まります。
カット野菜や冷凍野菜を常備しておくと、考える時間もなく「入れるだけ」で済むので、ハードルがぐっと下がります。
昼は「選び方」を少し変えるだけ
外食やコンビニでも工夫はできます。丼ものよりも定食を選ぶ、サラダを1品追加する、具だくさんのスープを選ぶ。それだけで野菜の量は増えていきます。
サラダを選ぶときは、ツナや蒸し豆、ゆで卵などたんぱく質を一緒に摂れるものを選ぶと、満足感も高まります。
夜は「つけ合わせ」を野菜多めにシフト
夕食は、メイン料理のつけ合わせを意識するだけで変わります。肉や魚を焼くついでに、にんじんやピーマン、きのこを一緒に炒める。それだけで彩りが増え、脂溶性ビタミンの吸収率も高まります。
煮物やスープなど、火を通した野菜は量を摂りやすいのもポイント。生野菜だけに頼らず、加熱調理もうまく使うと続けやすくなります。
間食は「野菜スティック」という選択肢も
小腹が空いたとき、お菓子の代わりにきゅうりやにんじんのスティック野菜を用意しておくのも一つの方法です。味噌やマヨネーズを少しつけるだけで、意外と満足感があります。
「野菜をおやつにする」という発想を持っておくと、間食の質も変わってきます。
作り置きで“野菜の貯金”をつくる
余裕があるときに、野菜を「作り置き」しておくと、忙しい日の救世主になります。
蒸し野菜は冷蔵で3〜4日、ミネストローネやラタトゥイユは冷蔵で4〜5日、冷凍なら2週間ほど保存できます。浅漬けやピクルスも、冷蔵庫にあると「あと1品」がすぐに整います。
“野菜の貯金”があると、献立を考える負担が減り、結果的に野菜を食べる機会が増えていきます。
無理なく続けるために覚えておきたいこと
野菜を増やすとき、いくつか意識しておくと続けやすくなるポイントがあります。
まず、生野菜だけにこだわらないこと。生野菜はかさがあるため、量を摂るのが難しくなりがちです。加熱するとかさが減り、たくさん食べやすくなります。
次に、冷凍野菜や缶詰を活用すること。冷凍野菜は旬の時期に収穫・加工されているため、栄養価が落ちているわけではありません。手軽さと栄養を両立できる頼もしい存在です。
そして、完璧を目指さないこと。350gに届かない日があっても、翌日に意識すればいい。「できる範囲で、少しずつ」が、結果的にいちばん続きます。
今日の1皿が、体を整える第一歩になる
野菜は、私たちの体を「静かに、でも確実に」支えてくれる存在です。目に見える変化はすぐには現れなくても、1か月、3か月と続けていくうちに、体調や肌、お通じの変化として返ってきます。
今日すぐに350gを目指す必要はありません。まずは+1皿から。朝の味噌汁に野菜を足す、昼のサラダを少し大きめにする、夜の炒め物に1種類野菜を加える。
そんな小さな積み重ねが、あなたの体と心をやさしく整えてくれます。
参考
- (※1)厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要」
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。