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2026.01.21

肝臓をいたわる食事。健康診断の数値が気になり始めた人へ

働く人と食の健康

肝臓をいたわる食事。健康診断の数値が気になり始めた人へ

健康診断の結果が届いて、γ-GTPやALTの欄に目が止まった経験はありませんか。「去年より少し高くなっている」「基準値ギリギリだ」…そんな数字を見ると、なんとなく気になってしまいますよね。

「お酒はそこまで飲まないのに」と首をかしげる方も多いのではないでしょうか。実は、肝臓の数値は飲酒量だけでは決まりません。日々の食習慣の積み重ねが、少しずつ表れてくる場所でもあるのです。

この記事では、肝臓の働きや数値が上がる背景を整理しながら、毎日の食事で無理なく続けられるケアの方法をご紹介します。

肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれる理由

肝臓は体の中で最も大きな臓器です。栄養の代謝やアルコールの分解、胆汁の生成など、500種類以上の仕事をこなしています。

これほど働き者でありながら、肝臓には痛みを感じる神経がほとんどありません。だから、多少ダメージを受けていても自覚症状が出にくい。「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんです。

つまり、健康診断の数値こそが肝臓からの数少ないサインということ。「少し高め」の段階で気づけたなら、それは見直しを始めるちょうどいいタイミングかもしれません。

お酒だけではない、肝臓に負担をかける習慣

肝臓の数値が上がる原因として真っ先に思い浮かぶのはアルコールですが、実はそれだけではありません。近年注目されているのが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。

これは、お酒をほとんど飲まない人にも起こる脂肪肝のこと。背景にあるのは、糖質の摂りすぎ、脂質過多、食べすぎ、運動不足といった生活習慣です。

果糖の摂りすぎに要注意

とくに果糖(フルクトース)は、肝臓でダイレクトに代謝されるため、摂りすぎると中性脂肪として蓄積されやすくなります。甘いジュースや菓子パン、果物の大量摂取が習慣になっている方は、少し意識してみるとよいかもしれません。

脂質の「量」より「質」が問題になることも

揚げ物や脂身の多い肉、バターやクリームを多用した料理が日常的に続くと、肝臓への負担は積み重なっていきます。お酒を控えていても数値が上がる理由は、こうした「見えにくい脂肪肝リスク」にあることが少なくありません。

肝臓をいたわる食事の3つのポイント

では、どんな食事を心がければよいのでしょうか。ポイントは大きく3つあります。

たんぱく質は「適度に」が大切

肝臓の細胞は再生能力が高く、ダメージを受けても修復しようとします。その材料になるのがたんぱく質です。

ただし、摂りすぎると今度は肝臓がたんぱく質を処理する負担が増えてしまいます。肉・魚・卵・大豆製品をバランスよく、「毎食どれか1品」くらいの感覚で取り入れるのがおすすめです。

脂質は「量」より「質」を意識する

脂質を極端に減らす必要はありません。むしろ大切なのは、どんな脂質を選ぶかです。

控えたいのは、飽和脂肪酸を多く含む食品。霜降り肉、バター、生クリーム、菓子パン、揚げ物などが該当します。これらは「週に何回か」にとどめるくらいの意識で十分です。

一方、積極的に取り入れたいのは、不飽和脂肪酸を含むもの。オリーブオイル、青魚(サバ、サンマ、イワシなど)、アボカド、ナッツ類は、脂質でありながら体にやさしい選択肢です。

糖質は「量」と「速度」を調整する

糖質そのものを敵視する必要はありませんが、摂り方には工夫が必要です。

白いごはんやパン、麺類だけで食事を済ませると、血糖値が急上昇しやすくなります。余った糖は中性脂肪に変わり、肝臓に蓄積される原因に。

野菜や海藻、きのこなど食物繊維を先に食べる、精製度の低い穀物(玄米、雑穀、全粒粉パン)を選ぶ。こうした工夫で、糖質の吸収スピードをゆるやかにできます。

肝臓の働きを助ける食材たち

日々の食卓に取り入れやすい、肝臓にやさしい食材をご紹介します。

ブロッコリーやキャベツなどアブラナ科の野菜

ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、小松菜などのアブラナ科野菜には、スルフォラファンという成分が含まれています。これは肝臓の解毒酵素の働きをサポートするとされ、近年注目を集めています(※1)。

加熱しすぎると成分が減るため、蒸し焼きや短時間の茹でがおすすめです。

タウリンを含む魚介類

イカ、タコ、貝類(ホタテ、アサリ、カキなど)に多く含まれるタウリンは、胆汁酸の分泌を促し、肝臓の解毒作用を助けるアミノ酸です。刺身や蒸し料理、スープに加えるなど、シンプルな調理法で取り入れやすい食材です。

大豆製品

豆腐、納豆、高野豆腐、豆乳などの大豆製品は、良質なたんぱく源であると同時に、脂肪の蓄積を抑える働きが期待されています。肉の量を少し減らして、その分を大豆製品で補う。それだけでも脂質のバランスは整いやすくなります。

コーヒー(適量)

意外かもしれませんが、コーヒーと肝臓の関係は多くの研究で報告されています。適度なコーヒー摂取が肝機能の維持に良い影響を与える可能性があるとされています(※2)。

ただし、砂糖やクリームをたっぷり入れると糖質・脂質の摂りすぎにつながるため、ブラックか少量のミルク程度で楽しむのがよいでしょう。

1日の中で意識したい食事の工夫

ここからは、1日の流れの中で無理なく続けられる工夫を、シーン別にご紹介します。

朝は軽めでも「たんぱく質」を意識する

朝食を抜いたり、菓子パンとコーヒーだけで済ませたりしていませんか。肝臓の修復は夜間に進むため、朝は材料となるたんぱく質を補給するタイミングです。

卵をひとつ加える、ヨーグルトを足す、納豆ごはんにする。こうした小さな工夫で、朝から肝臓をサポートできます。

昼は「揚げ物+野菜」のセットを意識する

外食やお弁当で揚げ物が多くなりがちなのがお昼どき。揚げ物そのものを避けるより、「揚げ物を食べるなら野菜や汁物を一緒に」という意識が続けやすいでしょう。

唐揚げ弁当の日は、翌日を魚料理にする。ラーメンを食べるなら、野菜トッピングを増やす。1食単位ではなく、2〜3日の流れでバランスを取る感覚でOKです。

夜は「脂質の質」を整える時間

夜は一日の疲れもあって、こってりしたものに手が伸びやすい時間です。ここで意識したいのは、量を減らすことより、脂質の「質」を整えること。

肉料理が続いたら、翌日は魚や大豆製品に切り替える。炒め油は目分量ではなく小さじ1〜2を計って使う。おいしく食べながら、脂の種類だけ意識してみてください。

見落としがちな落とし穴

肝臓をいたわろうと意識しても、思わぬところで負担をかけてしまうことがあります。

糖質オフでも脂質過多なら意味がない

糖質制限を意識するあまり、肉やチーズ、バターに偏った食事になっていませんか。糖質を減らしても、飽和脂肪酸が増えれば肝臓への負担は変わりません。

サプリメントの過剰摂取

健康のためにと複数のサプリメントを飲んでいる方は、一度見直してみてください。サプリメントの成分も肝臓で代謝されるため、種類や量が多すぎると負担になることがあります。

今日の食卓が、未来の肝臓を守る

肝臓の数値を改善するために、食事を極端に制限する必要はありません。「週に2回は魚料理にする」「揚げ物は週1回まで」「野菜を先に食べる」。このくらいの意識で十分です。

数値の変化には時間がかかります。焦らず3か月、半年と続けていくうちに、少しずつ体と数字に変化が表れてきます。

まずは今日の一食から、何かひとつ試してみませんか。ただし、数値が高い状態が続く場合や急激に上昇した場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

参考

  • (※1)Kikuchi M. et al., “Sulforaphane-rich broccoli sprout extract improves hepatic abnormalities in male subjects”, World Journal of Gastroenterology, 2015
  • (※2)Kennedy OJ. et al., “Coffee, including caffeinated and decaffeinated coffee, and the risk of hepatocellular carcinoma: a systematic review and dose–response meta-analysis”, BMJ Open, 2017

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この記事の監修者

管理栄養士・料理家

ひろのさおり

お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。