2025.09.05
妊娠がわかったら意識したい葉酸のこと。赤ちゃんの発達を支える栄養の基本
ライフステージ別の食事
妊娠検査薬で陽性を見たとき、嬉しさと同時に「これからどうすればいいんだろう」という不安がよぎる方は多いのではないでしょうか。
産婦人科で最初に言われることのひとつが「葉酸を摂ってくださいね」という言葉。でも、なぜそれほど大切なのか、どのくらい摂ればいいのか、具体的にどんな食材に含まれているのか──意外と知らないまま過ごしている方も少なくありません。
ここでは、妊婦さんが知っておきたい葉酸の基本と、毎日の食事でムリなく摂るための工夫をお伝えします。
葉酸が妊娠初期に大切な理由
葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管がつくられる時期に、とても重要な役割を担っています。
この神経管の形成は、実は妊娠4〜6週という非常に早い段階で進みます。つまり、妊娠に気づく前からすでに始まっているのです。この時期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害のリスクが高まることがわかっています(※1)。
だからこそ、妊娠を希望している段階から意識的に葉酸を摂ることがすすめられています。「妊娠がわかってから」では、すでに神経管形成の大切な時期を過ぎている可能性があるからです。
とはいえ、妊娠がわかった今からでも遅くはありません。葉酸は妊娠初期だけでなく、赤血球をつくったり、細胞分裂を助けたりと、妊娠期間を通じて必要な栄養素です。今日から少しずつ意識していくことで、赤ちゃんの健やかな成長を支えることができます。
妊婦さんに必要な葉酸の量とは
成人女性の葉酸の推奨量は、1日あたり240μgです。ところが妊娠初期は、これに加えて240μgの追加摂取が推奨されており、合計で480μgが目安となります(※2)。
480μgと聞くとピンとこないかもしれませんが、これは意識して食材を選ばないと、なかなか到達しにくい量です。たとえば、ゆでたほうれん草100gに含まれる葉酸は約110μg。毎食しっかり緑の野菜を取り入れても、食事だけで480μgに届かせるのは簡単ではありません。
そこで、不足が心配な場合はサプリメントの活用も選択肢になります。ただし、サプリメントに含まれる葉酸は吸収率が高いため、摂りすぎにも注意が必要です。1日の合計が1,000μgを超えないようにしましょう。過剰摂取は、ビタミンB12欠乏症の発見を遅らせる可能性があるとされています。
まずは食事からできるだけ摂り、足りない分をサプリメントで補う──このバランスが理想的です。
葉酸を多く含む身近な食材たち
葉酸は「葉っぱのビタミン」という別名があるほど、緑の野菜に豊富に含まれています。ただ、野菜だけではありません。豆類、果物、海藻など、意外と身近な食材にも含まれています。
緑黄色野菜
ほうれん草、ブロッコリー、菜の花、アスパラガス、春菊、枝豆などは、葉酸の宝庫です。特にほうれん草は鉄分も一緒に摂れるので、妊婦さんにとっては心強い食材。おひたしや味噌汁、炒め物など、調理法を変えれば飽きずに続けられます。
豆類・大豆製品
納豆は1パック(約50g)で約60μgの葉酸を含み、手軽に摂れる優秀食材です。発酵食品なので消化吸収もよく、朝食の定番にぴったり。枝豆も冷凍ストックしておけば、ご飯に混ぜたりスープに加えたりと使い勝手が良いです。
果物
いちご、マンゴー、アボカドなども葉酸を含みます。特にいちごは、つわりで食欲がないときでも食べやすいビタミン源。アボカドは良質な脂質と葉酸を一緒に摂れるので、1日1/2個を目安に取り入れてみてください。
海藻類
焼きのりは少量でも葉酸が豊富です。おにぎりに巻いたり、味噌汁に散らしたり、手軽にプラスできます。
調理法で変わる葉酸の吸収率
せっかく葉酸を多く含む食材を選んでも、調理法によっては栄養が逃げてしまうことがあります。葉酸は水溶性で熱に弱いという性質があるため、調理の工夫がポイントになります。
短時間加熱がおすすめ
長時間ゆでると、葉酸が水に溶け出してしまいます。電子レンジ加熱や蒸し調理など、短時間で仕上げる方法を選ぶと、栄養をキープしやすくなります。ブロッコリーなら、レンジで2〜3分加熱するだけで彩りも栄養も保てます。
ゆでるなら少量の湯でサッと
どうしてもゆでる場合は、たっぷりの湯ではなく少量の湯でサッと仕上げるのがコツ。ゆで時間は1〜2分程度に抑え、ゆで汁をスープに活用すれば、溶け出した栄養も無駄になりません。
生で食べられるものは生で
春菊やベビーリーフなど、生で食べられる葉野菜は、サラダとして取り入れると葉酸を逃さず摂取できます。オリーブオイルやナッツを合わせれば、脂溶性ビタミンの吸収も助けてくれます。
新鮮なうちに使い切る
葉酸は光や空気でも分解されやすい性質があります。野菜は買ってきたら早めに使い切るか、冷凍保存で鮮度をキープしましょう。
毎日の食卓に葉酸を取り入れる工夫
葉酸を摂るために特別な料理を用意する必要はありません。普段の食卓に、少しずつ「葉酸を含む食材」を足していくだけで大丈夫です。
◎朝ごはんの例
ほうれん草入りの卵焼きに、いちごをのせたヨーグルト。納豆ご飯に焼きのりを添えるのもいいですね。朝から意識的に緑の野菜を取り入れると、1日のスタートが変わります。
◎昼ごはんの例
枝豆とアスパラを混ぜた雑穀ごはんに、ブロッコリーの味噌汁。外食やコンビニでも、サラダやおひたしを1品追加するだけで葉酸量がアップします。
◎夜ごはんの例
納豆とオクラをのせた冷やしそばに、春菊と豆腐のサラダ。火を使わずに済むメニューは、体調が優れないときにも助かります。
作り置きしておくと便利なもの
菜の花のおひたし、アボカドとポテトのサラダ、枝豆の塩ゆでなどは、まとめて作っておくと毎食に少しずつ足せます。冷蔵庫に葉酸食材のストックがあると、それだけで安心感が違います。
サプリメントを活用するときの注意点
食事だけでは不安という方は、サプリメントを併用するのも賢い選択です。ただし、いくつか気をつけたいポイントがあります。
まず、サプリメントに含まれる葉酸は「モノグルタミン酸型」と呼ばれ、食品に含まれる葉酸よりも体内での吸収率が高くなっています。そのため、食事と合わせて1日1,000μgを超えないよう注意しましょう。
また、葉酸サプリを選ぶ際は、妊婦向けに設計されたものを選ぶと安心です。葉酸だけでなく、鉄やビタミンB12など、妊娠期に必要な栄養素がバランスよく配合されている製品も多くあります。
サプリメントはあくまで補助的なもの。まずは食事からしっかり摂ることを基本に、足りない分をサポートする形で活用してください。
今日からできることを少しずつ
葉酸は、妊娠初期のからだと赤ちゃんの発達を支える“ベースの栄養”です。特別な食材や高価なサプリメントに頼らなくても、日常の食卓の中でしっかり摂ることができます。
大切なのは、完璧を目指すことではなく、できる範囲で続けること。「今日はほうれん草を足してみよう」「明日は納豆を食べよう」──そんな小さな積み重ねが、赤ちゃんの健やかな成長につながっていきます。
無理なく、できる範囲で。頑張りすぎず続けることが、栄養をきちんと届ける一番の近道です。
参考
- (※1)厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」(平成12年)
- (※2)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。