2025.10.23
作り置きを長持ちさせるコツ。おいしさと安心を両立させる調理・保存の工夫
調理と保存のコツ
日曜の午後、来週のお弁当用にと作った煮物やおかず。冷蔵庫に並べた瞬間は達成感でいっぱいなのに、水曜あたりで「なんだか味が落ちてる…」「これ、まだ食べて大丈夫かな」と不安になった経験はありませんか。
せっかくの作り置きも、傷んでしまえば食べられません。かといって、保存料たっぷりの市販品に頼るのも気が引ける。そんなジレンマを感じている方は多いのではないでしょうか。
実は、作り置きの”もち”を左右するのは、調理段階のちょっとした意識と、保存時の基本を押さえるかどうか。特別な道具や技術がなくても、今日からすぐに実践できる工夫ばかりです。
ここでは、管理栄養士の視点から、作り置きを安全においしく長持ちさせるためのポイントをお伝えします。
作り置きが傷みやすくなるのはなぜか
まずは、料理が傷む原因を知っておきましょう。敵を知れば、対策も立てやすくなります。
水分は微生物にとっての”ごちそう”
食品が傷む最大の原因は、微生物の繁殖です。そして微生物が最も好むのが「水分」。煮物の煮汁、和え物から出る水気、蒸し野菜の水滴など、料理に残った水分は、細菌やカビにとって絶好の繁殖環境になります。
水分が多いほど傷みやすい。これを頭に入れておくだけで、調理や保存の判断が変わってきます。
温度管理の”すき間”が命取りになる
もうひとつの大敵が「温度」です。とくに危険なのは、20〜40℃前後の”ぬるい”温度帯。この範囲は細菌が最も活発に増殖するゾーンで、調理後に常温で放置する時間が長いほど、リスクは高まります。
熱いうちにフタをすると、容器内に水滴がこもり、これも傷みの原因に。「粗熱を取ってから密閉し、速やかに冷蔵庫へ」が鉄則です。
調理段階でできる”傷みにくい”工夫
保存性を高めるポイントは、実は調理の段階にあります。少しの意識で、日持ちは大きく変わります。
仕上げで水分をしっかり飛ばす
煮物は煮汁を少し煮詰めてから仕上げる。炒め物は強火でしっかり水気を飛ばす。この「最後のひと手間」が、保存性を左右します。
葉物野菜のように水が出やすい食材は、生のまま保存するより、ナムルやふりかけ風に加工してしまうのがおすすめです。加熱して水分を飛ばし、調味料でコーティングすることで、ぐっと日持ちがよくなります。
塩分・糖分の”浸透圧パワー”を活用する
塩や砂糖には、味を整えるだけでなく、保存性を高める働きがあります。これは浸透圧の作用で、食品中の「自由水」と呼ばれる微生物が利用できる水分を減らしてくれるため。
肉や魚にしっかり下味をつけておくと、加熱後も味がぼやけにくく、冷蔵保存中のおいしさが長持ちします。逆に、薄味の副菜は傷みやすいので、早めに食べ切るか、塩昆布や梅肉と和えて保存性を高める工夫を。
酸味をプラスして保存力アップ
酢やレモン汁などの酸味も、保存の強い味方です。酸性の環境では細菌が繁殖しにくくなるため、南蛮漬けやマリネ、ピクルスといった料理は、もともと日持ちするようにできています。
魚は南蛮漬けに、野菜はビネガーマリネに。さっぱりとした味わいは食欲をそそり、彩りも明るくなって一石三鳥です。
毎日の調理に取り入れたい小さなコツ
特別なことをしなくても、ほんの少しの工夫で作り置きの質は変わります。今日から試せるアイデアをいくつかご紹介します。
カレーは”翌日分”と”冷凍分”を最初から分ける
カレーやシチューなどの煮込み料理は、作った翌日が一番おいしいですが、それ以降は傷みやすくなります。最初から「明日食べる分」と「冷凍する分」を分けておくのがおすすめ。冷凍分には塩をほんの少し足しておくと、解凍後も味がぼやけません。
卵焼きにはマヨネーズをひとさじ
卵焼きを作るとき、卵液にマヨネーズを少量加えてみてください。油分が卵のたんぱく質の結合をゆるやかにし、冷めてもふんわりしっとりした食感が続きます。お弁当の定番おかずが、ワンランクアップしますよ。
鶏肉の下味冷凍にはレモン果汁を
鶏肉を下味冷凍するとき、調味液にレモン果汁を加えてみましょう。酸味が臭みを抑え、解凍後に焼いても爽やかな仕上がりに。クエン酸の働きで肉質もやわらかくなります。
保存時に押さえておきたい基本
調理後の保存方法も、おいしさと安全を守る重要なポイントです。
粗熱を取ってから密閉する
調理直後の熱い料理をそのまま密閉すると、容器内に水滴がこもります。この水滴が傷みの原因になるため、必ず粗熱を取ってからフタをしましょう。目安は、容器の底を触ってぬるいと感じる程度まで冷めてから。
冷蔵は4℃以下、冷凍は−18℃以下をキープ
冷蔵庫の温度設定を確認していますか。冷蔵室は4℃以下、冷凍室は−18℃以下が基本です。ドアの開閉が多いと温度が上がりやすいので、作り置きは奥のほうに置くのがベター。
日付を記録して「見える化」する
作った日付をラベルに書いて貼っておくと、「いつ作ったか」が一目瞭然。冷蔵保存なら2〜3日、冷凍なら2〜3週間を目安に食べ切りましょう。記憶に頼らず「見える化」することで、うっかり食べ忘れを防げます。
容器選びも意識してみる
保存容器は、ガラス製やホーロー製がおすすめです。においや色が移りにくく、清潔に長く使えます。プラスチック製を使う場合は、油分の多い料理を入れると劣化しやすいので、こまめに買い替えを。
気をつけたい食材と料理
作り置きに向かない食材や、とくに注意が必要な料理もあります。
生野菜を使ったサラダは水分が出やすく、ドレッシングをかけると傷みが早まります。サラダを作り置きしたい場合は、野菜とドレッシングを別々に保存し、食べる直前に和えるのがベストです。
じゃがいもは冷凍すると細胞が壊れ、解凍後に食感がボソボソになります。カレーやシチューを冷凍する際は、じゃがいもだけ取り除くか、マッシュ状にしてから冷凍を。
豆腐も冷凍には不向きです。水分が多いため、解凍すると「す」が入ったような食感に変わってしまいます。
水分・味付け・温度。この3つを意識するだけで変わる
作り置きを長持ちさせるコツは、突き詰めると「水分を減らす」「味をしっかりつける」「温度を適切に管理する」の3つに集約されます。
どれも難しいことではありません。煮汁を少し煮詰める、下味をしっかりつける、粗熱を取ってから冷蔵庫へ入れる。こうした小さな積み重ねが、作り置きの”もち”と”おいしさ”を支えてくれます。
忙しい毎日の中で、作り置きは頼もしい味方です。ちょっとした工夫を加えることで、時短だけでなく「安心して食べられる」という価値もプラスされます。
今日の作り置きから、ひとつずつ試してみませんか。
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。