2025.11.20
冬のほうれん草をもっとおいしく。栄養を守る調理のコツを管理栄養士が解説
調理の保存とコツ
冬のほうれん草は、甘みも栄養もピークを迎えます。
せっかく旬の時季にいただくなら、その良さをしっかり残したまま調理したいもの。ただ、ほうれん草に多く含まれるビタミンCは熱や水に弱く、調理方法の違いで損失が大きく変わります。
ここでは、家庭でできる“栄養を逃さない調理のポイント”を、やさしく紹介します。毎日の献立にもすぐ活かせる内容です。
冬のほうれん草に宿る栄養と、その弱点
まず知っておきたいのは、冬どりほうれん草の栄養価の高さです。夏場と比べてビタミンCが2〜3倍に増えるほか、βカロテン、葉酸、鉄なども豊富。寒さに当たることで甘みも増し、味の濃い仕上がりになります。
一方でビタミンCは水溶性で、加熱にも弱い“デリケートな栄養素”。水にさらしすぎたり、長時間ゆでたりすると大きく失われてしまいます。
この特性を踏まえながら、調理の工夫を見ていきましょう。
加熱の工夫|短時間でさっと火を通すのがポイント
ほうれん草の栄養を守るなら、加熱時間を極力短くすることが基本です。たっぷりの熱湯で長くゆでてしまう方法は、どうしても栄養ロスが大きくなりがちです。
蒸しゆでで手早く仕上げる
鍋に少量の水を入れてほうれん草をのせ、ふたをして1〜2分蒸しゆでします。湯に触れる面積が少ないため、ビタミンの流出を抑えながら火を通すことができます。
加熱後はすぐ冷水にとり、色止めと余熱による過加熱を防ぎましょう。
電子レンジで手軽に加熱する
洗ったほうれん草を水気がついたままラップでふんわり包み、耐熱皿にのせます。600Wで約2分加熱し、途中で上下を返すとムラなく仕上がります。
電子レンジ加熱も“少量の水×短時間加熱”ができるので、栄養を守る調理法として有効です。こちらも加熱後は冷水に取り、色よく仕上げます。
下処理の順番|切るのは加熱のあとに
ほうれん草を生の状態で切ると、切り口からビタミンCが溶け出しやすくなります。そこでおすすめしたいのが、「加熱 → 切る」の順番にすること。
束のまま加熱してから食べやすい長さに切ると、栄養ロスが少ないだけでなく、食感もよく、水っぽさも抑えられます。
料理にするときの工夫|汁ごと食べる・油と合わせる
加熱と下処理に続いて、仕上げの段階でも栄養を守る工夫ができます。
汁ごと食べられる料理にする
スープや煮浸しのように汁も一緒に味わえる料理なら、溶けだした栄養まで逃しません。
ほうれん草のえぐみが気になる場合は、みそやコンソメで味を整えるとぐっと食べやすくなります。
油と合わせて吸収率を高める
βカロテンは脂溶性のため、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。
オリーブオイルでさっと炒める、胡麻油と合わせて和えるなど、短時間で仕上がる料理と相性抜群。にんにくをほんの少し加えると、香りの良い一皿になります。
日々の台所で役立つひと工夫
調理で栄養を守る工夫をおさえたら、次に気になるのは日々の扱い方です。
保存や下ごしらえのちょっとしたコツを知っておくと、ほうれん草がもっと使いやすくなります。
- 加熱後はしっかり水気を切り、小分け冷凍に。忙しい朝のお弁当づくりがぐっとラクになります。
- 和え物に使うときは、軽く絞ってから調味を。余分な水分が抜け、味がぼやけません。
- 作り置きは密閉容器に入れ、冷蔵庫で2〜3日を目安に食べ切るのが安心です。
- 鉄分や葉酸をしっかり摂りたい日は、卵やツナ、納豆などのたんぱく質と合わせると一皿で栄養が整います。
旬のほうれん草は、ひと工夫でさらにおいしく
冬のほうれん草は、甘みも栄養も満ちている食材です。加熱の仕方や切る順番、仕上げの工夫をほんの少し意識するだけで、いつもの料理がぐっと豊かになります。
蒸してさっと火を通す、加熱後に切る、汁ごといただける料理にする、油と合わせて吸収を高める。どれも難しいことではありませんが、積み重ねるほど味わいにも栄養にも違いが出ます。
旬の野菜がいちばんおいしい季節に、ぜひ食卓でも気軽に楽しんでみてください。
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。