
2025.09.16
砂糖の「白」と「茶色」はどう違う?管理栄養士が伝えたい、色だけに惑わされない選び方
栄養の基本
調理の保存とコツ

「白砂糖よりも、きび砂糖や黒砂糖のほうが体に良さそう」そんなイメージを持っている方は多いかもしれません。
ですが、実は色の違いがそのまま健康への良し悪しを示しているわけではありません。
この記事では、管理栄養士の視点から、砂糖の色・成分・選び方についてやさしく解説します。
砂糖の色はどうして違うの?
私たちが日常で使う砂糖には、白いものもあれば茶色いものもありますが、この色の違いは“栄養価”ではなく製造工程や加熱の有無によって決まります。
もともと、砂糖の原料であるサトウキビやてん菜から抽出される糖液は、淡い褐色をしています。
そこからどれだけ不純物や糖蜜(シロップ成分)を取り除いたか、また加熱でカラメル化が進んだかによって、見た目や風味が変化するのです。
「茶色い=体にいい」は思い込み?色と栄養の関係を整理しよう
「茶色い砂糖はミネラルが多くて体に良さそう」といったイメージがありますが、実際は種類によってまったく異なります。
砂糖の種類 | 原料 | 色の理由 | 製造法 | ミネラル含有 |
---|---|---|---|---|
白砂糖(グラニュー糖) | サトウキビ/てん菜 | 高純度の結晶が光を反射して白く見える | 高度に精製。不純物や糖蜜をほぼ除去。クセがなく溶けやすい | 極めて少ない |
三温糖 | サトウキビ | 加熱によるカラメル化で淡い茶色に変化 | 上白糖を結晶化させた後、再加熱して作る。コクと香ばしさあり | 白砂糖とほぼ同じ |
黒砂糖(含蜜糖) | サトウキビ | 糖蜜を分離せず煮詰めることで黒褐色になる | 精製せず糖液ごと固める。独特の風味が強い | やや多め(鉄・カリウムなど) |
きび糖 | サトウキビ | 糖蜜を一部残すため自然な薄茶色 | 黒砂糖より精製度が高く、白砂糖より低い。マイルドな甘み | 微量(黒砂糖より少なめ) |
てんさい糖 | てん菜(ビート) | 原料の色と糖蜜分が残るため淡褐色 | まろやかでやさしい甘さ。オリゴ糖を含む場合あり | ごくわずか(商品による) |
このように、「茶色い=栄養がある」というイメージは必ずしも正しくありません。
たとえば三温糖は、白砂糖と同じように高度に精製された糖液を加熱によって色づけたもので、ミネラル量もほぼ変わりません。
また、きび糖は黒砂糖と同じサトウキビを原料にし、風味も似ているものの、製造過程では糖蜜の一部を除いており、黒砂糖ほどの栄養価はありません。
てんさい糖も同様で、主成分はショ糖(スクロース)です。まれにオリゴ糖を含む商品もありますが、栄養補給を目的とするなら、豆類や根菜などから摂る方が効果的です。
ポイントは「色より使い方」。料理に合わせて選ぼう
砂糖を選ぶ際は、色やイメージにとらわれすぎず、仕上がりや風味、料理の目的に合わせて使い分けるのが賢い方法です。
- 色をつけずに仕上げたい焼き菓子やメレンゲには白砂糖(グラニュー糖)
クセのないすっきりとした甘さと透明感のある仕上がりに。 - 煮物や照り焼きなど、コクや香ばしさを活かしたい料理には三温糖や黒砂糖、きび糖
きび糖は黒糖ほど風味が強すぎず、家庭料理にも取り入れやすい自然なコクが魅力です。 - 素朴な甘さを生かしたい料理やお菓子にはてんさい糖
てんさい糖のまろやかな甘さは、和菓子や優しい味わいにしたいメニューに向いています。 - ミネラルを補いたいときは、砂糖ではなく食材全体の栄養バランスで調整を
砂糖に含まれるミネラルは微量。野菜・海藻・豆類などからの摂取が効果的です。
「茶色いから体に良い」「白い砂糖は悪い」といったイメージに惑わされず、味わいや料理の仕上がりで選ぶ視点を大切にしましょう。
砂糖は、料理と健康のバランスをとるための“調味料のひとつ”として、上手に使いこなすことがポイントです。
砂糖と健康的に付き合うためのヒント
砂糖は料理にコクや満足感を加えてくれる、欠かせない調味料のひとつ。ですが、摂り方を間違えると肥満や生活習慣病のリスクが高まる可能性もあります。
色や種類にこだわるよりも、“量”と“使いどころ”に目を向けることが、日々の健康管理においては重要です。
以下のポイントを意識して、無理なく“ちょうどいい甘さ”を取り入れてみましょう。
✔ 1日の砂糖摂取目安は「25g(大さじ2杯)以内」
世界保健機関(WHO)が推奨する基準。料理や飲み物に使われる砂糖も含めて、意識してみましょう
✔ 「自然派」「茶色い=健康」というイメージに惑わされない
製法や加熱工程による色の違いであり、栄養価に大きな差があるとは限りません。
✔ 甘い味付けのときは、食事全体でバランスを取る
たとえば、甘辛い主菜を作った日は、副菜をあっさり仕上げるなど、全体での調整が大切です。
無理に「ゼロ」にする必要はありません。生活にうるおいを与えてくれる“甘さ”と、ほどよい距離感で付き合っていきましょう。
色ではなく「使い方」が大切。砂糖を正しく選ぼう
砂糖の「白」と「茶色」は、栄養価の差ではなく、製法や加熱による見た目と風味の違いです。どの砂糖も主成分はショ糖であり、健康効果を過信するのは避けたいところ。
重要なのは、“量を意識しながら、料理や目的に合わせて使い分ける”ことです。
日々の食卓で、必要なときに、必要なだけ。そんな「ちょうどよい使い方」を意識して、砂糖と賢くつき合っていきましょう。