
2025.09.23
味覚を育てる離乳食|赤ちゃんの「おいしい」が広がる5つの工夫
ライフステージ別の食事

「離乳食で味覚を育てたいけど、何から始めればいいの?」そんな声をよく耳にします。
実は、生後6〜18か月は“味覚の伸びしろ”がもっとも大きい時期。この時期にどんな食体験をするかが、将来の好き嫌いや食への関心にも影響を与えることがわかっています。
この記事では、管理栄養士としての視点から、赤ちゃんの味覚を育てる5つの具体的な工夫をわかりやすくお伝えします。
なぜ味覚を育てることが大切なの?
赤ちゃんの味覚は、実は妊娠中から少しずつ育ちはじめています。羊水を通して母親の食事の香りや味を感じ取り、生まれてすぐには母乳やミルクの“甘み・うま味”を識別できるようになるのです。
とくに生後6〜18か月頃は、味覚の発達がもっとも活発な時期。この時期は、赤ちゃんが新しい味を受け入れやすく、海外では「フレーバーウィンドウ(flavor window)」と呼ばれることもあります。いろいろな味を経験することで、将来の好き嫌いが減り、食の幅が広がると考えられています。
一方で、濃い味付けや限られた食材だけで育つと、偏食や塩分・糖分のとりすぎにつながる心配もあります。だからこそ、素材そのものの味を大切にした離乳食で“自然な味覚”を育てることが重要です。
味覚を育てる5つの工夫
1. 多様な食材で「味の引き出し」を増やす
赤ちゃんは“食べたことがある味”を安心して受け入れます。
毎週1〜2種類ずつでも構いません。月齢に合わせて使える食材を増やし、さまざまな素材の味に慣れさせていくことが大切です。
実践ヒント:
- 1週間分の食材リストを作り、未経験の食材に★印をつけて管理
- 「単品食材 → 組み合わせ」へ、少しずつステップアップ
2. 苦味・酸味・旨味にもチャレンジ
赤ちゃんは本能的に“苦味や酸味”に警戒しやすい傾向がありますが、少量をくり返し経験することで受け入れやすくなります。
また、だしの旨味を覚えることで、塩や砂糖に頼らない味付けが習慣になり、将来の健康にもつながります。
実践ヒント:
- 小松菜ペースト、みかん果汁、ヨーグルトなどを少しずつ
- だしパック+追いがつおで香り豊かな“旨味体験”を
- 魚介・野菜の煮汁を料理のベースに使うのも◎
3. 味の「組み合わせ」で発見を広げる
離乳中期以降は、複数の食材の“味の掛け合わせ”を体験させましょう。
組み合わせることで味の広がりが生まれ、「これはなに?」「おいしい!」と感じる味覚の成長につながります。
実践ヒント:
- 野菜+豆腐/ごはん+魚そぼろ などのミニ丼風
- 野菜とたんぱく質をとろみでまとめてスープ仕立てに
- 「同じ食材でも違う食べ方」にチャレンジ(焼く/煮るなど)
4. 調味料はごく少量から、素材の味をベースに
離乳初期は基本的に無添加。中期以降でも、素材本来の味を活かすことを重視しましょう。
調味料を使うときは、ごく微量から始め、赤ちゃんの反応を見ながら少しずつ慣らしていきます。
実践ヒント:
- 塩やしょうゆは0.1g(耳かき1杯)から
- 減塩・無添加タイプの調味料を選ぶ
- 素材の甘み・旨味を引き立てる「だし活用」が鍵
5. 親子で同じ味を楽しむ
赤ちゃんは大人の表情や反応をよく見ています。
親が同じ食事を楽しんでいる姿を見ることで、安心して味を受け入れるようになります。
実践ヒント:
- 赤ちゃん用と同じ食材で、大人用の薄味料理を作る
- 「おいしいね」と声をかけながら、笑顔で一緒に食べる
- 同じスプーンは避けつつ、味見して次の食材選びに活かす
安心して味覚育成を進めるために
味覚を育てる過程では、「この味はまだ早いかな?」「塩分はどのくらいまで大丈夫?」と迷うことも多いですよね。でも大丈夫。いくつかの基本を押さえておけば、安心して離乳食を進められます。
ここでは、管理栄養士の立場から“味覚育成を無理なく続けるためのチェックポイント”をまとめました。
ポイント | 実践アドバイス |
---|---|
新しい食材 | 1さじから・午前中に与えて様子を見る |
だし選び | 原材料が「かつお・昆布のみ」の無添加タイプがおすすめ |
味の進め方 | 「慣れてきたら少しずつ」でOK、焦らなくて大丈夫 |
食べ残し活用 | 冷凍キューブにして翌週のアレンジに回すと◎ |
“味を知る”ことが「食べる力」につながる
味覚づくりは、特別なことをしなくても毎日の離乳食の中で自然に育ちます。
小さな経験をひとつずつ積み重ねていくことで、赤ちゃんは「おいしい」「楽しい」を覚え、将来の“食べる力”につながっていきます。
焦らず、赤ちゃんのペースに合わせて。親子で味の世界を広げていきましょう。