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2025.10.09

“機能性表示食品”の本当の見方|制度を知って上手に活かす

食品表示と制度の話

“機能性表示食品”の本当の見方|制度を知って上手に活かす

「脂肪の吸収を抑えるお茶」「睡眠の質を高めるサプリ」など、健康効果を前面に出した食品を見かけることが増えました。これらは「機能性表示食品」と呼ばれるものです。

一方で「トクホとどう違うの?」「どこまで信頼できるの?」と感じたことはありませんか。実は、この制度の仕組みや背景を少し知るだけで、消費者はもちろん、食品を扱う企業にとっても、商品づくりや情報発信の精度が大きく変わります

この記事では、管理栄養士の視点から、機能性表示食品の制度と正しい活かし方を解説します。表示の根拠や注意点を理解することで、「買う側」にも「つくる側」にも納得感のある選択と発信ができるようになります。

日々の食生活や商品企画のヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

3つの制度のちがいを整理しよう

健康効果を表示できる食品には、実は3つの区分があります。

区分特徴責任の所在
機能性表示食品事業者が科学的根拠をまとめて消費者庁へ届け出。国の個別審査なし。表示内容・安全性について 事業者が全責任を負う「食後の血糖値上昇をゆるやかにする」ヨーグルト飲料
特定保健用食品(トクホ)国(消費者庁)が審査し、効果と安全性を認可。国と事業者双方「血圧が高めの方に適する」緑茶飲料
栄養機能食品ビタミン・ミネラルが基準値以上含まれていれば表示可。届け出不要。事業者「ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持を助けます」錠菓

ここで注目したいのは、「誰が責任を負うのか」という点です。機能性表示食品は、国が事前に審査するわけではなく、根拠や安全性の信頼性は事業者自身が担保します。
もし健康被害や誤表示が起きた場合、その説明責任も企業が負う仕組みです。

制度の背景と、ここ数年の広がり

機能性表示食品制度が始まったのは2015年。消費者庁が「エビデンスをオープンにし、企業の責任で情報を発信する」という新しい形を導入したのがきっかけです。

現在(2025年時点)では、届け出件数は6,000件を超え、飲料・ヨーグルト・お菓子・冷凍食品など、幅広いジャンルに拡大しています。また、「記憶の一時的なサポート」「疲労感の軽減」など、従来の食品にはなかった多様な機能も見られるようになりました。

こうした広がりは、消費者の健康志向の高まりと、企業の研究・開発努力の結果とも言えます。
ただし、裏を返せば「表示の理解」や「根拠の見極め」がますます重要になっているということでもあります。

どんな根拠が必要? 事業者が届け出る内容とは

事業者は、機能性表示食品として販売する際、以下の情報を消費者庁に届け出ます。

  1. 安全性に関する情報(既存の食経験・試験データなど)
  2. 科学的根拠(臨床試験または文献レビュー)
  3. 機能性関与成分の含有量と働き
  4. 表示する文言と摂取目安量

参考: 消費者庁「機能性表示食品について」

これらはすべて消費者庁の「機能性表示食品データベース」で一般公開されています。つまり、誰でも「どんな試験結果にもとづいているのか」を確認できる仕組みです。

管理栄養士が見る“活かし方”のポイント

機能性表示食品の強みは、「目的に合わせて選びやすいこと」。ただし、「効果がある/ない」ではなく、「自分に合うかどうか」で考えるのが大切です。

たとえば「おなかの調子を整える」と書かれていても、成分は難消化性デキストリン・乳酸菌・オリゴ糖などさまざま。アプローチや体質との相性によって感じ方が変わります。

また、続けやすさ(味・価格・入手のしやすさ)も実感に大きく関わります。“お守り感覚”で買うより、「目的・根拠・継続」の3軸で判断するのが賢い活用法です。

企業にとっての信頼づくりにもつながる

企業側にとっても、機能性表示食品は信頼と透明性を示すツールになり得ます。消費者が求めているのは「健康になる魔法の食品」ではなく、「安心して選べる理由」です。

根拠をわかりやすく伝える、専門家のコメントを添える、生活の中での取り入れ方を示す—こうした一歩が、ブランドへの信頼と購買意欲の両方を高めます。

自分に合う“補助線”として取り入れる

機能性表示食品は、私たちの健康を支える「補助線」のような存在です。制度を理解し、根拠を確認しながら選ぶことで、より安心して取り入れられるようになります。

日々の食事や生活習慣の延長線上にある“プラスα”として、目的と体質に合う商品を選んでみましょう。

そして、事業者の立場でも「正しく伝える姿勢」を持つことが、社会全体の健康づくりにつながっていきます。

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この記事の監修者

管理栄養士・料理家

ひろのさおり

お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。