2025.10.25
「無添加」表示の落とし穴とは?2024年から変わったルールと正しい見方
食品表示と制度の話
スーパーの棚で「保存料無添加」「合成着色料不使用」と書かれた商品を手に取ったこと、ありますよね。なんとなく体によさそうで、つい安心してカゴに入れてしまう。その気持ち、とてもよくわかります。
でも、その「無添加」という言葉、どこまで信じていいのでしょうか。
実は2024年4月から、「無添加」や「不使用」という表示に関するルールが本格的に動き出しました。消費者庁が定めた新しいガイドラインによって、これまで曖昧だった表示の基準が明確になったのです。
この記事では、なぜ「無添加」表示が問題視されてきたのか、どんなルールに変わったのか、そして私たち消費者や事業者がどう向き合えばいいのかを、できるだけ噛み砕いて整理します。
そもそも食品添加物はどう表示されている?
まず、基本をおさらいしておきましょう。
加工食品のパッケージを見ると、原材料名の欄に「/(スラッシュ)」で区切られた部分があります。この「/」より後ろに書かれているのが食品添加物です。
たとえば、「保存料(ソルビン酸K)」「酸化防止剤(ビタミンC)」といった表記を見たことがあると思います。これは「用途名+物質名」というルールで書かれています。つまり、「何のために使っているか」と「何を使っているか」がセットで示されているわけです。
ただし、すべての添加物が表示されるわけではありません。
製造途中で使っても最終製品にはほとんど残らない「加工助剤」や、原料由来でごく微量しか含まれない「キャリーオーバー」は、表示が免除されています。
ここが、「無添加」表示のグレーゾーンになりやすいポイントなのです。
なぜ「無添加」表示に規制がかかったのか
「無添加」という言葉には、不思議な安心感があります。「何かを足していない=体にやさしい」というイメージが自然と浮かんでくるからかもしれません。
でも、これまでの「無添加」表示には、いくつかの問題がありました。
たとえば、「何が無添加なのか」がはっきり書かれていないケース。パッケージに大きく「無添加」とだけ書いてあっても、保存料のことなのか、着色料のことなのか、すべての添加物のことなのか、わからないですよね。
あるいは、その食品にはもともと使わない成分を「不使用」と強調しているケース。清涼飲料水に「保存料不使用」と書いてあっても、もともと保存料を使う必要がない製品なら、それは「安心材料」ではなく「当たり前のこと」に過ぎません。
さらに厄介なのが、保存料は使っていないけれど、保存性を高める別の成分を使っているケース。消費者からすれば、「保存料不使用なのに長持ちするのはなぜ?」という疑問が残ります。
こうした曖昧な表示が広がり、消費者の誤解を招きやすい状態が続いていました。そこで登場したのが、消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」です。2022年に策定され、2024年4月から本格運用が始まりました。
新しいガイドラインで何が変わったのか
ガイドラインは、主にパッケージ(容器包装)上の表示を対象としています。ポイントを5つに整理してみましょう。
1. 「無添加」だけでは不十分
「無添加」とだけ書くのはNGです。「保存料不使用」「合成着色料無添加」のように、何が無添加なのかを具体的に示す必要があります。消費者が「何が入っていないのか」を正しく理解できるようにするためです。
2. 根拠のない表現は使えない
「化学添加物ゼロ」「天然成分だから安心」といった表現は、法的な定義がなく、科学的根拠も曖昧なため、使用が認められません。「天然」と「合成」で安全性に差があるわけではない、というのが食品安全の基本的な考え方です。
3. もともと使わない成分の強調は禁止
その食品に通常使われない添加物を「不使用」と強調することは、消費者に誤った安心感を与えるおそれがあるため、問題視されます。「使わないのが当然」のことを、あたかも特別な配慮のように見せるのは適切ではない、ということです。
4. 代替成分を使っていれば「無添加」とは言えない
たとえば保存料は使っていないけれど、保存性を高める目的で別の成分(pH調整剤など)を添加している場合、「保存料無添加」と表示するのは誤認表示になりえます。「入れていないけれど、同じ目的で別のものを入れている」という状態では、消費者の期待に応えていないからです。
5. 表示免除の添加物も含めて「ゼロ」であること
加工助剤やキャリーオーバーは表示が免除されていますが、最終製品に残っていれば「無添加」とは言えません。本当に何も入っていないことを証明できなければ、その表示は使えないのです。
広告やPOPは対象外?それでも注意が必要な理由
ここで気をつけたいのが、ガイドラインの適用範囲です。
このガイドラインが直接対象としているのは、パッケージ(容器包装)上の表示に限られます。つまり、チラシやPOP、Webサイトなどの広告・販促物は、ガイドラインの適用範囲外ということになります。
「じゃあ広告では自由に『無添加』と言えるの?」と思うかもしれませんが、そう単純ではありません。
広告や販促物で消費者に誤解を与える表現をした場合、景品表示法(不当表示規制)に抵触する可能性があります。実際に、インターネット広告で「無添加」を過度に強調した事業者に対して、行政指導が入った事例も報告されています。
つまり、事業者にとっては「パッケージはガイドラインを守る」「広告は景品表示法も意識する」という二重のチェックが必要になるわけです。
消費者として「無添加」とどう付き合うか
では、私たち消費者はどう行動すればいいのでしょうか。
大切なのは、「無添加=安心」と短絡的に考えないことです。
「無添加」と書いてあっても、それが何を指しているのか、他に代替成分が使われていないか、原材料欄を見て自分で確認する習慣を持つと、選び方がぐっと変わってきます。
また、食品添加物そのものを必要以上に怖がる必要もありません。添加物には、食品の腐敗を防ぐ、栄養を安定させる、風味や色を保つなど、私たちの食生活を支える重要な役割があります。すべての添加物は、国が安全性を評価したうえで使用が認められているものです。
「無添加だから良い」ではなく、「何のために、何が使われているか」を理解したうえで選ぶ。これが、情報に振り回されない食品選びの第一歩になります。
事業者として押さえておきたいチェックポイント
事業者の方は、以下の点を実務で確認しておくと安心です。
- パッケージの表示がガイドラインに沿っているか、すべての文言を点検する
- 「何が無添加か」を具体的に明記しているか確認する
- もともと使用しない成分を強調していないかチェックする
- 代替成分を使っている場合、「無添加」表示が適切かどうか再検討する
- 加工助剤やキャリーオーバーも含めて「ゼロ」と言えるか精査する
- 広告やPOPでも「安心・安全」を過度に訴求していないか見直す
- 営業・広報・デザイン担当など社内全体でルールを共有する
表示の正しさは、そのまま消費者からの信頼につながります。「言葉のイメージ」ではなく「事実に基づいた情報」を伝えることが、ブランド価値を守ることにもなるのです。
誠実な表示が、信頼をつくる
「無添加」という言葉には、強い訴求力があります。だからこそ、その言葉の使い方には責任が伴います。
消費者にとっては、表示を鵜呑みにせず、原材料欄を読む力を持つこと。事業者にとっては、ルールを守り、誤解を招かない表現を選ぶこと。
どちらも「面倒くさい」と感じるかもしれません。でも、その積み重ねが、食品選びの質を上げ、商品やブランドへの信頼を育てていきます。
まずは今日、手に取った商品の原材料欄をじっくり読んでみませんか。そこには、「無添加」という言葉だけでは見えなかった情報がきっと詰まっています。
出典
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。