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2025.12.02

発酵食品はなぜ体にいい?発酵で生まれる成分と“食べやすさ”の話

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発酵食品はなぜ体にいい?発酵で生まれる成分と“食べやすさ”の話

発酵食品というと、「腸に良いもの」というイメージが強いかもしれません。もちろんそれも大切なポイントです。

ただ、発酵食品の価値は“腸活”だけで語り切れません。発酵の過程で生まれる有機酸やアミノ酸などの成分、そして食材が分解されて「食べやすい状態」になること自体が、日々の体調管理にじわっと効いてきます。

そこで今回は、発酵食品の働きを3つの視点から整理し、暮らしの中で無理なく続けるための使い方までつなげていきます。

まず最初に|発酵食品の“意外な誤解”をほどく

発酵食品というと「生きた菌を腸に届けるもの」と思われがちです。

でも実際は、菌が腸に“住み続ける”かどうかは別問題。むしろ、発酵で生まれた有機酸やアミノ酸、消化されやすい形といった要素が、日々のコンディションづくりに役立つ面もあります。

つまり、発酵食品は「菌」だけでなく、「発酵が作った状態そのもの」にも価値がある、ということです。

発酵食品の3つの役割|体の中で何が起きている?

発酵食品は、①胃腸の負担を軽くする ②腸の環境を整える ③体のリズムを整える、の3方向から働きかけます。「なんとなく体に良い」で終わらせず、何が起きているのかを、できるだけ噛み砕いて見ていきましょう。

1. 消化吸収を助ける=胃腸の“仕事量”を減らす

発酵でたんぱく質や糖質が分解されると、消化の負担が軽くなることがあります。疲れている日や食後が重い日ほど、発酵食品が取り入れやすく感じるのはこのためです。

たとえば、塩こうじで下味をつける、味噌汁を添える。これだけでも「胃腸にやさしい献立」に寄せられます。

2. 腸内環境を整え、免疫をサポート=腸の“住み心地”を整える

善玉菌そのものは、ヨーグルト・納豆などの発酵食品(プロバイオティクス)から取り入れられます。

ただ、菌だけを摂れば十分というわけではありません。そこで意識したいのが、善玉菌のエサになる食物繊維(特に水溶性)やオリゴ糖(プレバイオティクス)です。

この「菌+エサ」を一緒に摂る考え方がシンバイオティクスで、食材の組み合わせの方針が立てやすくなります。

3. お通じ改善で体内リズムを整える=整うと、1日が回りやすい

腸の状態は、便通のリズムに直結します。便通が乱れると、だるさや食欲のブレ、肌の不安定さにつながりやすい。だからこそ、腸を整えることは「なんとなく不調」の立て直しとして、まず取り組みやすいポイントになります。

ここは発酵食品だけに頼らず、水分・食物繊維・生活リズムも一緒に整えると、便通の揺らぎが出にくくなります。

「発酵食品」を“料理の道具”として使う

発酵食品は、健康のために我慢して食べるものではありません。むしろ、料理の中で「味を決める」「コクを足す」「満足感を上げる」道具として使うと、自然に取り入れる回数が増えます。

ここでは、発酵食品を料理の中で活かすコツを紹介します。

忙しい日の「たんぱく質」をラクに:ヨーグルトを調味料にする

肉や魚を焼く前に、ヨーグルト+塩少々(好みでカレー粉)を薄く絡めます。ヨーグルトの酸と乳成分で、しっとり仕上がりやすく、ソース要らずの味になります。

「腸のために食べる」ではなく、「美味しくて便利だから使う」。この発想が続けやすさのポイントです。

食欲がない日の味の立ち上げ:味噌を香りで使う

味噌は、味噌汁以外にも幅広く使えます。野菜炒めやスープの仕上げに、味噌を小さじ1/2ほど溶かすと香りが立ち、食欲が戻りやすくなります。

塩分が気になる場合は、だしを効かせたり、酢や柑橘の酸味を添えたりして、味噌の量を増やしすぎずに満足感を出すと続けやすくなります。

お通じが気になる日の「朝の型」:甘酒を“飲む”より“足す”

甘酒(米麹タイプ)は飲むだけでなく、ヨーグルトやオートミールに混ぜて使うと、朝の習慣に組み込みやすくなります。砂糖の代わりに小さじ1ほど足すイメージにすると、甘さを足しすぎず、発酵食品のバリエーションも広がります。

朝に「ヨーグルト+果物+甘酒小さじ1」など、型を決めておくと迷いません。

主菜が軽い日のたんぱく質を足す:納豆は夜に

納豆は朝のイメージが強いですが、夜に回すと「主菜が軽い日」のたんぱく質補助になります。例えば、豆腐・海藻・納豆を同じ器にまとめれば、火を使わずに一品が完成。

食物繊維(海藻、きのこ、オクラなど)を添えると「菌+エサ」の形になりやすいです。

発酵食品は続く形で取り入れよう

塩分が多い発酵食品(味噌・漬物・キムチなど)は、量を決めて少しずつ。また「加熱すると意味がない」と思われがちですが、発酵で生まれた成分や風味は残ります。生にこだわりすぎず、生活に合う形でOKです。

結局は、続けられる形がいちばん。冷蔵庫にあるもので、まず1つ“定番”を作ってみましょう。

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この記事の監修者

管理栄養士・料理家

ひろのさおり

お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。