2025.12.26
妊娠期・授乳期の体重管理と栄養についての基本
ライフステージ別の食事
朝、体重計に乗るたびにドキドキしてしまう。「増えすぎかな」「でも赤ちゃんのために食べなきゃ」——妊娠中や授乳期は、そんな気持ちの揺れを感じやすい時期ですよね。
お腹の赤ちゃんの成長を願いながらも、自分の体の変化に戸惑うのは自然なこと。この記事では、妊娠期・授乳期における体重管理の考え方と、母子ともに大切な栄養について整理していきます。
妊娠中の体重増加には意味がある
「妊娠したら太る」というイメージがあるかもしれませんが、妊娠中の体重増加は赤ちゃんの成長や出産に必要なもの。赤ちゃん自体の重さに加え、羊水や胎盤、母体の血液量の増加など、すべてに理由があります。
一方で、増えすぎると妊娠高血圧症候群や難産のリスクが高まり、逆に増えなさすぎると低出生体重児のリスクにつながることも。だからこそ、適切な範囲での体重増加を意識することが大切なのです。
体重増加の目安を知っておこう
厚生労働省では、妊娠前のBMI(体格指数)に応じた体重増加の目安を示しています(※1)。
| 妊娠前のBMI | 体重増加の目安 |
|---|---|
| 18.5未満(やせ) | 12〜15kg |
| 18.5〜25未満(ふつう) | 10〜13kg |
| 25〜30未満(肥満1度) | 7〜10kg |
| 30以上(肥満2度以上) | 個別対応(上限5kgが目安) |
これはあくまで目安であり、個人差があります。妊婦健診で医師や助産師と相談しながら、自分に合ったペースを確認していきましょう。
特に妊娠後期は赤ちゃんの成長が著しい時期。1週間に300〜500g程度の増加が一般的とされています。急激な増減があった場合は、早めに医療機関に相談してみてください。
授乳期に気をつけたい体重の落とし方
出産後、「早く元の体型に戻したい」と思う気持ちはよくわかります。でも、授乳期に過度な食事制限をするのはおすすめできません。
母乳をつくるために、体は1日あたり約500kcalものエネルギーを消費しています。これは軽いジョギングを1時間続けるのと同じくらい。つまり、授乳そのものがエネルギーを使う活動なのです。
無理に食事量を減らすと、母乳の質や量に影響が出たり、お母さん自身が疲れやすくなったりすることも。体重は「戻す」というより、栄養をしっかり摂りながら自然に落ちていくのを待つくらいの気持ちでいるのがちょうどいいかもしれません。
妊娠・授乳期に意識したい栄養素
この時期は、通常よりも多くの栄養素が必要になります。なかでも特に意識したいのが、次の5つです。
葉酸
葉酸は、赤ちゃんの神経管の発達に深く関わる栄養素。妊娠初期に十分な量を摂ることで、神経管閉鎖障害のリスクを減らせることがわかっています。
緑黄色野菜、枝豆、納豆、レバーなどに多く含まれますが、食事だけでは不足しがちなため、厚生労働省ではサプリメントでの補給も推奨しています(※1)。
鉄
妊娠中は血液量が増えるため、鉄の必要量も大幅に増加します。不足すると貧血を起こしやすくなり、疲れやすさやめまいの原因に。
赤身の肉や魚、小松菜、あさり、ひじきなどを意識して取り入れてみましょう。ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がるので、食後に柑橘類を食べるのもおすすめです。
カルシウム
赤ちゃんの骨や歯の形成に欠かせないカルシウム。母体のカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出して補われるため、将来の骨粗しょう症リスクにもつながります。
牛乳やチーズ、小魚、大豆製品などから、毎日コツコツ摂取することを心がけてみてください。
たんぱく質
細胞やホルモン、酵素の材料となるたんぱく質は、赤ちゃんの体をつくるためにも欠かせません。
卵、大豆製品、鶏むね肉、魚、ヨーグルトなど、さまざまな食品からバランスよく摂るのがポイントです。
DHA・EPA
青魚に多く含まれるDHA・EPAは、赤ちゃんの脳や神経の発達をサポートする栄養素。特にDHAは、妊娠後期から授乳期にかけて赤ちゃんの脳に多く蓄積されます。
さば、いわし、さんまなどの青魚を週に2〜3回取り入れられると理想的です。魚の調理が面倒なときは、缶詰を活用するのも手軽でいいですね。
水分補給も忘れずに
授乳中は母乳として水分が出ていくため、脱水になりやすい状態です。のどが渇く前に、こまめに水分を摂る習慣をつけましょう。
ただし、カフェインには利尿作用があるため、コーヒーや紅茶の飲みすぎには注意が必要です。麦茶やルイボスティー、白湯など、カフェインを含まない飲み物を中心に選ぶと安心です。
毎日の食事で意識したいこと
「栄養バランスを整えなきゃ」と思うと、かえってプレッシャーになってしまうこともありますよね。完璧を目指すよりも、できる範囲で続けられる工夫を取り入れていきましょう。
まず意識したいのは、主食・主菜・副菜が揃う食事を基本にすること。いわゆる“定食スタイル”です。これだけで、自然と栄養バランスが整いやすくなります。
主食は、白米を雑穀米や玄米に置き換えると、食物繊維やビタミンB群が摂れるうえ、血糖値の上昇もゆるやかになります。
調理に時間をかけられない日は、缶詰や冷凍野菜、納豆など、手軽に使える食材を味方につけてみてください。「ちゃんと料理しなきゃ」と気負わなくても、栄養は摂れます。
小腹がすいたときは、お菓子よりも素焼きナッツやヨーグルト、果物など、栄養価の高いものを選ぶと一石二鳥。間食も栄養補給の機会と考えると、罪悪感なく楽しめますよね。
不安なときは専門家に相談を
体重の増え方や食事の内容に不安を感じたら、一人で抱え込まずに相談することが大切です。
妊婦健診では医師や助産師に体重管理について聞くことができますし、病院や自治体によっては管理栄養士による栄養相談を受けられる場合もあります。
「こんなことを聞いてもいいのかな」と遠慮する必要はありません。専門家の視点からアドバイスをもらうことで、気持ちが楽になることも多いものです。
自分自身のケアも大切にして
妊娠・出産・育児は、想像以上に体力も気力も使うライフイベントです。赤ちゃんのことを第一に考えるあまり、自分のことを後回しにしてしまいがちですが、お母さんが元気でいることが、赤ちゃんの健やかな成長につながります。
体重や食事のことで悩みすぎず、自分の体と心をいたわる時間も大切にしてください。疲れたら休む、困ったら誰かに頼る——そんな”がんばりすぎない姿勢”が、この時期を心地よく過ごすコツかもしれません。
参考
- (※1)厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」(令和3年3月)
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。