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2026.03.01

衣の率・皮の率が廃止へ。調理冷凍食品の表示改正と実務対応

食品表示と制度の話

衣の率・皮の率が廃止へ。調理冷凍食品の表示改正と実務対応

約40年にわたって調理冷凍食品の表示を規律してきた個別ルールが、令和8年4月1日をもって廃止されます。冷凍フライ類の「衣の率」、ぎょうざの「皮の率」、ハンバーグの「食肉含有率」—これらの義務表示が横断ルールに統合される今回の改正は、包材の版下設計から商品名の見直しまで、幅広い実務判断を迫るものです。

根拠となる法令は、令和7年3月28日公布の「食品表示基準の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第26号)です。冷凍フライ類・ぎょうざ・ハンバーグ・米飯類・めん類など10品目を対象とする個別表示ルールが削除され、すべての加工食品に共通する横断的ルールへ一本化されます。

令和12年3月31日(2030年3月31日)まで経過措置があるため、施行後も製造済みの現行ラベル在庫はすぐに使えなくなるわけではありません。しかし次の版下切替のタイミングで新ルールを織り込むためには、今から影響範囲を把握して準備を進めることが不可欠です。

本記事では、改正の全容と、版下切替に向けた実務対応を整理します。なお、同じ改正内閣府令には調理冷凍食品の個別ルール以外の改正(栄養強化目的の添加物表示義務化等)も含まれていますが、本記事は調理冷凍食品の個別ルール変更に特化して解説します。

今回の改正で「何が」なくなるのか

廃止される個別ルールは、旧JAS法時代(昭和53年制定)から食品表示基準に引き継がれ、約40年にわたって調理冷凍食品業界を規律してきた規定です。以下の5つの別表から調理冷凍食品に関する規定が削除され、横断的ルールに統合されます。

別表調理冷凍食品に関して廃止・削除される主な内容廃止後の取り扱い
別表第3調理冷凍食品の定義(冷凍フライ類・冷凍ぎょうざ等の品目定義)横断的な「加工食品」として扱う
別表第4衣・皮・めん・ソースの原材料名を区分表示する個別ルール (例:「衣(小麦粉、パン粉…)」と括弧書きで区分する方式)横断的な原材料名表示ルールへ移行
別表第19衣の率・皮の率・食肉含有率・魚肉含有率の義務表示 内容個数・使用方法等の個別表示事項個別義務は廃止。任意表示は可
別表第20調理冷凍食品固有の表示様式・文字サイズルール横断的な表示方式へ
別表第22食材名を商品名に冠する場合の含有率基準 (例:「えびしゅうまい」→あんに対してえびが15%以上必要) コロッケの「クリームコロッケ」乳脂肪含有率規定 等個別規定は廃止。景表法・社会通念で対応

これらの廃止は、令和7年10月1日付の食品表示基準Q&A改正(最終改正:消食表第689号)でも反映済みです(加工-67等の調理冷凍食品個別ルールに関する問答が削除)。今回の廃止は業界団体からの長年の見直し要望を受けたものであり、今後の製品開発や表示設計の自由度が増す面もあります。

品目別の影響早見表

品目によって廃止される義務表示の内容は異なります。自社製品がどの品目に該当し、現行ラベルに何が記載されているかを確認するところから始めましょう。

品目現行の主な個別義務表示廃止後
冷凍えびフライ
冷凍魚フライ
冷凍いかフライ
冷凍かきフライ
衣の率の義務表示(閾値超過時)
例:えびフライは揚げ後65%超で「衣65%」表示が必須
衣の率の義務廃止
(任意表示は可)
冷凍コロッケ
冷凍カツレツ
衣の率の義務表示
例:コロッケは揚げ後40%超で表示が必須
衣の率の義務廃止
(任意表示は可)
冷凍ぎょうざ
冷凍しゅうまい
冷凍春巻
皮の率の義務表示(閾値超過時)
例:ぎょうざは皮の率45%超で「皮45%」表示が必須
皮の率の義務廃止
(任意表示は可)
冷凍ハンバーグ
冷凍ミートボール
食肉含有率の義務表示(40%未満の場合)
名称・原材料名の個別表記ルール
個別義務廃止
横断ルールが適用
冷凍フィッシュハンバーグ
冷凍フィッシュボール
魚肉含有率の義務表示(40%未満の場合)個別義務廃止
横断ルールが適用
冷凍米飯類(チャーハン・おにぎり等)名称・原材料名の個別表記ルール個別ルール廃止
冷凍めん類(うどん・スパゲッティ等)かやく・つゆ・めんを区分する原材料名ルール
(「かやく(かまぼこ、わかめ)」等の括弧書き)
個別ルール廃止
横断ルールが適用

実務上、特に注意すべき4つの論点

1. 衣の率・皮の率:削除すべきか、任意表示として残すべきか

義務がなくなった後の選択肢は「削除」か「任意表示として継続」かです。どちらが自社にとって合理的かを判断するにあたり、「競合他社が任意表示を継続した場合、自社製品だけが数値を表示しないことが消費者にどう映るか」というマーケティング上の視点も考慮に値します。えびフライやかきフライなど、衣の薄さ・具材の多さが品質訴求のポイントとなる商品では、あえて表示を継続することが差別化の武器になり得ます。

一方、任意表示を継続する場合は定期的な分析(測定)の実施と記録の保管が必要です。配合表だけでなく製造ロット単位の検査記録を残しておくことで、行政調査や取引先からの問い合わせにも対応できます。また、表示値が実測値を下回らないよう(切り捨て方向の数値で管理)社内基準を設けることが重要です。

2. 原材料名の「衣(…)」括弧書き:横断ルールへの移行でどう変わるか

現行の個別ルールでは「衣(小麦粉、パン粉、食塩、こしょう)」のように括弧書きで衣・皮・めんを区分表示できました。横断的ルールの原則では、原材料は製品全体における重量の多い順に並べて一括表示するのが基本です。

ただし、横断ルールにも「複合原材料の括弧書き表示」に関する規定があり、消費者の誤認防止に合理的な理由がある場合には、まとめ表示が認められるケースがあります。「衣(…)」形式を継続できるかどうかは、個別の商品構成や表示の仕方によって異なるため、消費者庁の食品表示課への個別照会または食品表示診断士等への確認を経たうえで判断してください。「従来どおりで大丈夫」と断定するのは危険です。

なお、横断ルールへの移行で実務上最も工数がかかる作業のひとつが、配合表の全面的な重量順再計算です。これまで「衣(パン粉、小麦粉、食塩…)」とまとめて書けていた成分は、今後、パン粉・小麦粉・食塩が製品全体の重量において何番目に位置するかを正確に算出し直す必要があります。多品目を抱える事業者では、この配合表の見直し作業だけで相応の時間とリソースが必要になるため、担当部門の業務量を見積もったうえでスケジュールを組むことをお勧めします。版下の改版より先に、配合表の精査から着手するのが効率的です。

3. 「えびぎょうざ」等の商品名:景表法と社会通念が新たな物差しに

別表第22の廃止により、「えびしゅうまい」と名乗るためのえびの含有率基準(あんに対して15%以上)や、「クリームコロッケ」の乳脂肪含有率基準などが廃止されます。これは「含有率が問われなくなる」のではなく、食品表示基準上の個別数値基準がなくなる代わりに、景品表示法の優良誤認規制と社会通念(消費者の合理的な期待)が判断基準になることを意味します。

なお、調理冷凍食品(ぎょうざ・しゅうまい・フライ類等)については、公正競争規約が設定されていません(令和8年3月現在、公正取引協議会が運営する食品関係の表示規約36規約の中に調理冷凍食品の規約は含まれていません)。所属する業界団体が独自の自主基準を設けている場合はそちらも確認が必要ですが、規約がない以上は景表法と社会通念が唯一の外部基準となります。過去の消費者庁の措置命令事例(優良誤認)を参照しながら、商品名の妥当性を自社で検討することが実務上の対応となります。

4. 栄養強化目的の添加物表示:同日施行だが別論点

令和7年3月28日の同じ改正内閣府令には、栄養強化目的で使用した添加物の表示義務化(第3条の改正)も含まれています。こちらは令和7年3月28日付で施行済みです(調理冷凍食品に限らず全加工食品が対象)。これまで省略できていたビタミン類・ミネラル類等の強化目的添加物も、他の添加物と同様に表示が必要になりました。調理冷凍食品において栄養強化目的の添加物を使用している場合は、こちらの対応状況も合わせて確認することをお勧めします。

施行日と経過措置を正確に把握する

「4月1日から即座に現行ラベルが使えなくなる」と誤解しているケースも見受けられます。経過措置の期限と意味を正確に理解しておくことが、包材在庫の消化計画や版下改版のスケジュール立案に直結します。

項目内容
改正公布日令和7年3月28日(内閣府令第26号)
調理冷凍食品の施行日令和8年4月1日(2026年4月1日)
経過措置の期限令和12年3月31日(2030年3月31日)
経過措置の意味令和12年3月31日までに製造・加工・輸入された加工食品は、旧ルールによる表示のまま販売可能
※ただし2030年4月1日以降の製造分から旧表示は使用不可
令和8年4月1日以降製造分から、原則として新ルール(横断ルール)を適用する
現時点(令和8年3月)施行まで残り1か月未満。現行ラベルのまま製造・販売は継続可能

「2030年まで余裕がある」という解釈は在庫消化の猶予としては正しいですが、新規設計の包材には施行後から新ルールを適用するのが正しい理解です。版下の改版コストや印刷リードタイム(一般に2〜4か月)を考えると、今から着手しないと次の版下切替に間に合わない可能性があります。

今すぐ確認すべき影響範囲と対応手順

改正への対応は「対象品目の棚卸し」から始まります。以下の手順に沿って、自社製品への影響範囲と優先度を確認しましょう。

手順確認事項ポイント
1対象品目の確認自社SKUに対象10品目が含まれるかリストアップする(フライ類6種・ぎょうざ・しゅうまい・春巻・ハンバーグ・ミートボール・フィッシュ系・米飯類・めん類)
2現行ラベルの棚卸し「衣の率」「皮の率」「食肉含有率」「魚肉含有率」など別表第19由来の表示項目を確認する
3原材料名の書き方の確認「衣(…)」「皮(…)」等の括弧書き区分表示がある場合、横断ルール下での書き方を消費者庁Q&Aまたは専門家に確認する
4商品名・キャッチコピーの確認食材名を商品名に冠している場合(「えびぎょうざ」等)、景表法の優良誤認リスクと社会通念の観点から問題がないか確認する。業界団体の自主基準がある場合はそちらも確認する
5任意表示継続の場合の管理体制衣の率・皮の率等を任意で継続表示する場合は、定期的な分析・検査記録の保管体制を整備する
6OEM・PB商品の確認製造委託先との改版タイミング・表示責任の所在・原料変更時の通知フローを確認・合意する
7栄養強化目的の添加物の確認同じ改正で既施行(令和7年3月28日〜)の「栄養強化目的添加物の表示義務化」への対応が完了しているかも確認する
8版下・包材切替計画修正箇所確定後、印刷会社との版下改版スケジュールと旧包材の消化計画を立案する

よくある誤解と落とし穴

「経過措置が2030年まであるから、対応は後回しでいい」

繰り返しになりますが、経過措置は「在庫消化のための猶予」です。次の版下切替のタイミングで新ルールを反映しない場合、気づいた時には2030年の期限が迫っているという事態になりかねません。取引先バイヤーや量販店から対応状況の確認を求められるケースも増えています。

「義務がなくなれば、えびが少なくても『えびぎょうざ』と名乗れる」

別表第22の廃止で行政の個別数値基準がなくなっても、景表法による優良誤認規制は変わりません。商品名への食材名の冠し方については、「消費者が合理的にどの程度の量を期待するか」という社会通念が新たな基準になります。判断に迷う場合は消費者庁への照会や専門家への確認を検討してください。

「衣の率の表示義務がなくなるなら、すぐに削除しよう」

削除すること自体は問題ありませんが、競合他社が任意表示として継続した場合、自社製品だけが数値を示せないという状況が生まれる可能性があります。品質訴求として衣の率や食肉含有率の高さが強みになっている商品では、マーケティング部門とも連携して削除・継続の判断をすることをお勧めします。

対応の優先順位と次のアクション

今回の改正の要点を一言でまとめれば、「約40年続いた個別ルールが廃止され、すべての加工食品と同じ横断的ルールに統合される」ということです。義務の廃止によって管理負荷は下がりますが、景表法と社会通念が判断基準になることで、自社の判断と責任の範囲が広がるとも言えます。

  • Step 1(今すぐ):自社製品が対象10品目に含まれるか確認し、現行ラベルに個別ルール由来の表示項目があるかを棚卸しする。栄養強化目的添加物の表示対応状況も確認する
  • Step 2(施行後の次の版下切替時):不要になる義務表示を削除・整理して版下に反映する。原材料名の書き方は消費者庁Q&Aまたは専門家に確認する。任意表示を継続する場合は分析・記録管理体制を整備する
  • Step 3(並行して):商品名・キャッチコピーの景表法リスクを確認し、OEM・PB商品の取引先との改版合意を進める。任意表示の継続判断はマーケティング部門とも連携して行う

表示ルールの解釈に迷う場面では、消費者庁の食品表示課への個別照会や、食品表示診断士・管理栄養士といった表示専門家への相談が最も確実な方法です。施行まで残り1か月未満——今日から動き出すことが、現場の混乱を最小化する最善策です。

参考

※本記事は、公表されている一次情報をもとに令和8年3月時点で作成しています。施行後のQ&A・通知等で運用が明確化される事項があります。詳細・最新情報は必ず消費者庁の公式サイトでご確認のうえ、自社製品への適用については専門家にご相談ください。

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