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2026.03.25

食品の販促表現で気をつけたい“言ってはいけないこと”― 景表法・薬機法・健康増進法の境界線と社内チェックの進め方

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販促・マーケティング

食品の販促表現で気をつけたい“言ってはいけないこと”― 景表法・薬機法・健康増進法の境界線と社内チェックの進め方

新商品のLPに“朝の目覚めが変わる”と載せたい。パッケージに“スッキリ”と書きたい。SNS投稿で“業界初”とアピールしたい。こうした表現を前にして「これ、大丈夫だろうか」と手が止まった経験はないでしょうか。

食品の販促表現には、以下の3つの法令が関わっています。

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)
  • 健康増進法
  • 不当景品類及び不当表示防止法(以下、景表法)

これらの法令に照らして販促表現をチェックするとき、見るべきポイントは大きく3つに整理できます。

  • 効能効果──治る・予防するなど身体への作用を示す表現はないか → 薬機法
  • 健康訴求──元気になる・体の調子を整えるなど健康効果を暗示していないか → 健康増進法
  • 優位性表示──No.1・○○倍など根拠が必要な比較表現はないか → 景表法

本記事では、この3法令の基本的な仕組みとNGになりやすい表現パターンを整理したうえで、社内チェック体制の考え方をお伝えします。

なぜ今、販促表現のリスク管理が重要なのか

近年、食品の販促表現に対する行政の監視は確実に厳しくなっています。景表法に基づく措置命令は令和5年度に44件を数え(※1)、健康増進法の領域でも、令和6年度にインターネット上の虚偽・誇大表示について519事業者に改善指導が行われています(※2)。

注目すべきは、措置命令を受けた場合の影響が金銭面にとどまらない点です。消費者庁サイトでの事業者名公表によるレピュテーションリスクは大きく、信頼回復に長い時間がかかることもあります。令和6年度にはステルスマーケティング告示による措置命令も5件出されており(※2)、行政が注視する表示の範囲は着実に広がっています。

「知らなかった」では済まされない環境になっている以上、販促担当者が基本的な判断軸を持っておくことの重要性は増しています。

3つの法令の役割を押さえる

3つの法令がそれぞれ何を規制しているか、基本構造を確認しましょう。

景品表示法薬機法健康増進法
規制対象商品を供給する事業者“何人も”(広告主・代理店・メディア等)“何人も”(販売業者に限定されない)
食品との関係品質・効果等の不当表示を直接規制医薬品的な効能効果を表示した場合に規制健康保持増進効果の虚偽・誇大表示を規制
主な処分措置命令、課徴金(売上の3%)措置命令、課徴金(売上の4.5%)、懲役・罰金勧告、命令、懲役・罰金

ポイントは、景表法が「事業者」を規制対象とするのに対し、薬機法と健康増進法は「何人も」を対象とする点です。つまり、広告代理店やインフルエンサーであっても違反を問われる可能性があり、外部パートナーへの委託時にはこの違いを意識しておく必要があります。

“してはいけない表現”の代表パターン

ここからは、法令ごとに問題になりやすい表現を見ていきます。

景表法で問題になりやすい表現

合理的根拠のない効果表示

“業界No.1の美味しさ”“満足度95%”といった表現は、客観的な調査データに基づかなければ優良誤認に該当するおそれがあります。消費者庁は令和6年9月にNo.1表示に関する実態調査報告書を公表しており、こうした表示への監視が強化されています。

原材料・成分の過大表示

商品名に特定の原材料名を冠していながら実際にはごく少量しか使用していない場合も、優良誤認の対象となりえます。過去には、主原料が小麦粉であるにもかかわらず米の品種名を冠した商品で措置命令が出されています。

不実証広告のリスク

優良誤認が疑われる表示に対し、消費者庁は事業者に合理的根拠の提出を求めることができます(不実証広告規制)。求められた日から原則15日以内に提出できなければ不当表示とみなされます。社内の体験談や少数のモニター調査では根拠として不十分とされるのが一般的です。

薬機法で問題になりやすい表現

食品は薬機法の直接の規制対象ではありませんが、広告に医薬品的な効能効果を表示すると、その食品が無承認の医薬品とみなされ薬機法違反となります。厚生労働省の「46通知」では、成分本質・効能効果・形状・用法用量の4観点から医薬品該当性を判断する基準が示されています(※5)。

具体的には、“血圧を下げる”“脂肪を燃焼する”“免疫力アップ”といった身体への作用を明示する表現が典型的なNG例です。ただし、特定保健用食品(トクホ)・栄養機能食品・機能性表示食品はそれぞれ定められた範囲で機能性を表示できます。また、野菜・果物・加工食品(豆腐、ヨーグルト等)のように外観から明らかに食品と認識できる「明らか食品」は、原則として医薬品とはみなされません。

健康増進法で問題になりやすい表現

健康増進法第65条第1項は、食品の健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示を禁止しています。消費者庁の留意事項(※3)では、問題となりうるパターンとして以下が例示されています。

  • 疾病の治療・予防を示唆する表現(例:“ガンが治る”“糖尿病を改善”)
  • 身体機能の増強を標ぼうする表現(例:“免疫力を高める”“脂肪燃焼を促進”)
  • 身体の不安に訴えかける表現(例:“体力の衰えを感じませんか? それは○○が不足しているからです”)
  • 体験談やデータの過大な引用(学術データの都合のよい部分のみを引用し、不都合な箇所を無視する等)

ここで注意したいのは、特定の単語が一律にNGになるわけではないという点です。判断基準はあくまで「広告全体から一般消費者がどのような印象を受けるか」です。パッケージ全体のデザイン、写真との組み合わせ、前後の文脈を含めて総合的に評価されます。一見穏やかな表現でも、ビジュアルや構成との組み合わせ次第では問題になりうる点に留意が必要です。

3ステップで考える判断フロー

3法令は重複して適用されることもあります。販促表現を目にしたとき、以下の順番でチェックしてみてください。

1. “治療・予防・身体機能の改善”っぽいか → 薬機法の問題

“治る”“予防する”“血圧を下げる”など、身体の構造・機能に影響を与える効果を明示している場合は、まず薬機法の問題です。保健機能食品として届出・許可を受けていない限り、こうした表現は使用できません。

2. “健康によさそう”と受け取られるか → 健康増進法の問題

ステップ1ほど直接的ではなくても、広告全体から“この食品を摂れば健康になりそう”という印象を消費者に与えるなら、健康増進法の観点から確認が必要です。文言単体ではなく広告全体の印象で判断されます。

3. 数値や比較で裏付けが必要か → 景表法の問題

“No.1”“業界初”“満足度○%”“○○倍の栄養素”など、数値を伴う優位性の主張には合理的根拠が必要です。また、二重価格表示の比較対照価格が適切かどうかも景表法のチェックポイントです。

なお、1つの表現が複数の法令に同時に抵触することもあります。たとえば「飲むだけで脂肪が燃える」といった表現は、食品でありながら医薬品的効能効果をうたっていると受け取られるおそれがあるほか、摂取だけで容易に痩身効果が得られるかのような虚偽誇大表示や、実際より著しく優良であると見せる表示として、薬機法・健康増進法・景表法の複数の観点から問題となり得る代表例です。

社内チェック体制の作り方

法令の知識を担当者個人に頼るのではなく、組織としてチェックする仕組みを整えることが重要です。消費者庁の「管理措置指針」(※6)でも、事業者に対して表示管理体制の整備が求められています。

販促物の制作フローに組み込める一次チェックリストの例を示します。デザイン入稿前の最終確認工程に位置づけると、運用が安定しやすくなります。

  • “No.1”“業界初”“満足度○%”など数値・比較表現に、根拠となる調査資料はあるか
  • 体験談やモニターの声が、商品の効果を保証するように見えていないか
  • 小さな注記(打消し表示)でメインの訴求内容を打ち消す構成になっていないか
  • 身体の変化を示す効能効果表現(“治る”“予防する”“血圧を下げる”等)が含まれていないか
  • 保健機能食品でない食品に、許可・届出のない機能性表示をしていないか
  • パッケージ・LP・SNS・チラシの間で、表現のトーンにズレが生じていないか

判断が難しいケースでは、法務部門や外部の専門家(弁護士・薬事コンサルタント等)への確認が望ましいと考えられます。新しい健康訴求表現の導入、機能性表示食品の広告設計、インフルエンサー起用のプロモーションなどは、一次チェックだけでは対応しきれない場面が多くなります。

なお、令和5年10月施行のステルスマーケティング告示により、インフルエンサー起用時は投稿が広告であることを消費者が判別できる表示が必須です。投稿ガイドラインの事前共有と投稿後のモニタリングを仕組みに組み込んでおきましょう。

まずは自社の販促物を棚卸しする

食品の販促表現を取り巻く法規制は複雑ですが、“効能効果”“健康訴求”“優位性表示”という3つの切り口を持っておくだけで、リスクの高い表現に気づきやすくなります。

まずは、自社の既存販促物(パッケージ・LP・SNS投稿・チラシ等)を洗い出し、本記事のNGパターンに該当する表現がないか確認してみてください。判断に迷う場合は、早めに法務部門や外部の専門家に相談しましょう。消費者庁や都道府県の表示相談窓口も活用できます。

なお、本記事は判断の枠組みを整理したものであり、個別の表現が法令に違反するかどうかの最終判断は弁護士や薬事の専門家にご確認ください。

法務判断そのものは専門家の確認が前提ですが、実務では“その表現が消費者にどう伝わるか”という視点での一次チェックも欠かせません。栄養・健康に関する表現の伝わり方について管理栄養士の視点を取り入れたい場合は、(株)セイボリーがサポートできます。販促物の表現設計を一緒に検討しましょう。

参考

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この記事の監修者

管理栄養士・料理家

ひろのさおり

お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。