2025.11.15
ダイエット中こそ見直したい。たんぱく質の役割と上手な付き合い方
栄養の基本
「痩せたいなら高たんぱくがいい」と聞く一方で、「どれくらい摂ればいいの?」「とりすぎたら逆効果にならない?」と悩む方は少なくありません。
たんぱく質はダイエット中の心強い味方ですが、量や選び方を間違えると、思ったほど効果が出なかったり、かえって体に負担がかかることもあります。
ここでは、管理栄養士の視点から、たんぱく質の役割・メリット・注意点・具体的なとり方まで、無理なく続けられる形で整理してお伝えします。
痩せたいときほど重要になる、たんぱく質の役割
まずは、なぜダイエット中にたんぱく質が大事なのかを整理しておきましょう。
たんぱく質は、筋肉・臓器・酵素・ホルモンなど、体をつくり動かすための材料になります。ダイエット中はエネルギー不足になりやすく、その状態が続くと、体は筋肉を分解してエネルギーを確保しようとします。
その結果、
- 基礎代謝が落ちて痩せにくくなる
- 体重は減っても疲れやすい
- リバウンドしやすい体質に近づく
といった状態に傾きがちです。
脂肪だけを落として、筋肉は守る。そのために、ダイエット中こそたんぱく質を意識して摂ることが大切です。
ダイエットを後押しする、たんぱく質の3つの働き
たんぱく質には、単に「筋肉の材料」以上のメリットがあります。
ここでは、ダイエット中に知っておきたい3つのポイントに絞って見ていきましょう。
1. 筋肉量を守り、基礎代謝の低下を防ぐ
エネルギーが足りない状態でたんぱく質まで不足すると、筋肉が分解されやすくなります。筋肉が減ると基礎代謝が下がり、「同じ量を食べても太りやすい体」に近づいてしまいます。
たんぱく質をしっかり確保することで、「筋肉をキープしながら、体脂肪を落としていく」 ダイエットが目指せます。
2. 食後のエネルギー消費(DIT)が高い
たんぱく質は、炭水化物や脂質に比べて、消化・吸収の過程で多くのエネルギーを使います。この「食事誘発性熱産生(DIT)」が高いことで、同じカロリーでも太りにくいという特徴があります。
「どうせ食べるなら、消費されやすい形で」その視点でメニューを考えると、自然とたんぱく質を含む一皿が増えていきます。
3. 満腹感が続きやすく、間食の防止にも
たんぱく質は胃にとどまる時間が長く、消化にも時間がかかります。そのため、食後の満腹感が長く続きやすく、血糖値の急上昇も抑えられます。
結果として、
- 食後すぐにお腹が空きにくい
- 間食・ドカ食いの予防になる
といった、「食べすぎない仕組みづくり」にもつながります。
1日どれくらい?体重から考えるたんぱく質の目安量
では、実際にどれくらいの量を目指せばよいのでしょうか。
一般的な目安としては、体重1kgあたりたんぱく質1.0〜1.2g/日がひとつの基準になります。
たとえば、
- 体重50kg → 1日50〜60g
- 体重55kg → 1日55〜66g
というイメージです。
運動量が多い方や筋肉を増やしたい方は、もう少し多めに設定する場合もありますが、ダイエット中の一般的な方であれば、まずは「体重×1.0g」を確保することを目標にするとよいでしょう。
食事シーンごとに分けて考えると続けやすい
数値だけ見てもイメージが湧きにくいので、1日50〜60gを目指すときの「食事タイミング別の例」を示してみます。
ここでは体重50kg前後の方を想定し、1日約55gになるように組み立てています。
| タイミング | 食材例(目安量) | たんぱく質量の目安 |
|---|---|---|
| 朝食 | ゆで卵1個(50g)+納豆1パック(40g) | 約13.6g |
| 昼食 | 鶏むね肉50g(皮なし)+豆腐100g | 約16.0g |
| 夕食 | 鯛1切れ(70g)+厚揚げ1/2枚 | 約20.1g |
| 間食 | 6Pチーズ1個+プレーンヨーグルト100g | 約5.4g |
| 合計 | ― | 約55.1g |
※たんぱく質量は一般的な食品成分表をもとにした概算です。商品や部位によって多少前後します。
「1食で15〜18g+間食で少し補う」と考えると、特別なことをしなくても、いつもの食事にちょっと足すだけで届く量だとわかります。
とりすぎ・偏りにも要注意。気をつけたい3つのポイント
たんぱく質は大切な栄養素ですが、「多ければ多いほど良い」というものではありません。
次のような点には注意しておきましょう。
1. カロリーオーバーにつながることがある
たんぱく質も1gあたり4kcalのエネルギーを持っています。
特に、脂身の多い肉やソーセージ・ベーコンなどの加工肉に偏ると、脂質由来のカロリーも上乗せされ、「高たんぱくのつもりが、ただの高カロリー食」になってしまうことがあります。
鶏むね肉・ささみ・白身魚・大豆製品など、脂質が少ないたんぱく源を意識して選びましょう。
2. 腎臓への負担が増える場合も
たんぱく質を代謝する過程では、尿素窒素などの老廃物が生じ、腎臓で処理されます。
健康な方が適量を摂る分には問題ありませんが、腎機能に不安がある方や既往歴のある方は、自己判断での「高たんぱく」には注意が必要です。
持病がある場合は、事前に医師や管理栄養士に相談してから量を決めると安心です。
3. 飽和脂肪酸のとりすぎにつながることも
肉や乳製品に偏ると、飽和脂肪酸の摂取量が増えやすくなり、長期的には動脈硬化や心血管系のリスクにも関わってきます。
肉だけでなく、
- 魚(特に青魚)
- 大豆製品(豆腐・納豆・厚揚げなど)
- 卵
といった、脂質の質が良いたんぱく源も組み合わせることが大切です。
たんぱく質を味方に、無理なく続けられるダイエットを
たんぱく質は、「痩せるため」だけでなく、健康的に痩せるための鍵を握る栄養素です。
- 筋肉を守る
- 代謝を支える
- 空腹感を抑える
こうした働きを最大限に活かすためには、自分の体重に合った量を知り、質の良い食材を選び、1日の中でバランスよく分けて摂ることがポイントになります。
「控える」ダイエットから、「選んで整える」ダイエットへ。たんぱく質を上手に味方につけて、続けやすく、戻りにくい体づくりを目指してみませんか。
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。