「無添加」って本当に安心？2024年から変わった表示ルールを正しく理解しよう

スーパーやコンビニでよく目にする「○○無添加」という言葉。体にやさしそうで、つい手が伸びる方も多いのではないでしょうか。

でも実は、2024年4月からこの「無添加表示」に関して新しいルールが導入されました。

「無添加だから安心」とは限らない。この記事では、ガイドラインの対象範囲や注意点、消費者・事業者それぞれが意識したいポイントを整理してご紹介します。

食品表示の基本ルールをおさらい

加工食品には、原材料と並んで食品添加物も記載することが義務づけられています。

原材料名の欄を見ると「／（スラッシュ）」以降に「保存料（ソルビン酸K）」「酸化防止剤（ビタミンC）」などの表示があるのがわかります。これは用途名＋物質名で表記するのがルールです。

ただし、例外もあります。

製造の途中で使っても最終的に残らない「加工助剤」や、原料に由来するごく微量の添加物（キャリーオーバー）は表示を免除されています。

ここが「無添加」とうたうときに問題となる重要なポイントです。

無添加表示が規制された背景

「無添加」と書かれていると、「安全そう」「体にいい」と受け止めがちです。ところが実際には、

• 何が無添加なのか明記されていない
• もともと使われない成分を「不使用」と強調
• 保存料を使っていないのに、別の保存性向上成分を使用

といった表現が多く見られました。

これでは消費者が誤解してしまいます。そこで、2024年4月から消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が本格的に運用されることになったのです。

ガイドラインで定められた主なルール（容器包装表示）

ガイドラインは、容器包装（＝パッケージ）上の表示を対象としています。特に注意すべきポイントは以下の5つです。

1. 「無添加」だけではNG
   「保存料不使用」「合成着色料無添加」など、対象の成分を具体的に明示する必要があります。
2. 定義のない表現は禁止
   「化学添加物」「天然だから安心」など、科学的根拠や法的定義のない表現は不可です。
3. もともと使われない成分の“不使用”強調は禁止
   もともと使われない食品で「保存料不使用」などと強調すると、消費者に誤認を与えるおそれがあります。
4. 代替成分にも注意
   目的が同じ別成分を添加している場合、「無添加」「不使用」と表示するのは誤認表示になります。
5. 加工助剤・キャリーオーバーもゼロであることが条件
   表示免除される添加物であっても、最終製品に残っていれば“無添加”とは表示できません。

広告・販促物にはどう影響する？

ここが誤解しやすいポイントです。ガイドラインの直接の対象は、容器包装（パッケージ）表示に限定されています。

したがって、チラシやPOP、Webサイトなどの広告表示は、このガイドラインの適用範囲外です。

ただし、広告や販促物で「無添加」を強調した場合、景品表示法や不当表示規制に触れる可能性があります。実際、自治体の調査ではインターネット広告の「無添加表示」に行政指導が入った例もあります。

つまり、

• パッケージ表示はガイドラインに従うことが必須
• 広告・販促物でも、消費者を誤認させない工夫が必要

という二重の視点が求められるのです。

実務で役立つチェックリスト

✔ パッケージの前後すべての文言をガイドラインに照らして確認

✔ 「何が無添加か」を具体的に書く

✔ 広告やPOPでも「安心・安全」を過度に訴求しない

✔ 製造工程・原料段階でキャリーオーバーまでゼロか精査

✔ 営業・広報・デザイン担当も含め、社内で統一したルール共有を

無添加＝万能ではない

添加物には、食品を守り、美味しさや栄養を安定させる役割もあります。大切なのは「無添加だから安心」ではなく、どんな目的で使われ、どう表示されているかを理解すること。

誠実に情報を伝えることは、消費者の信頼につながり、事業者にとっても大きな価値になります。

表示の正しさが信頼をつくる

「無添加」という言葉が持つ安心感は強力です。だからこそ、表示ルールに沿った正しい伝え方が欠かせません。

パッケージはガイドラインを遵守し、広告や販促物は景品表示法の視点も意識する。その積み重ねが、商品やブランドへの確かな信頼を築いていきます。