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2025.10.07

【管理栄養士が解説】子どもの食物アレルギーを疑ったときに知っておきたいこと

ライフステージ別の食事

【管理栄養士が解説】子どもの食物アレルギーを疑ったときに知っておきたいこと

「子どもにじんましんが出た」「食後に急に咳をしはじめた」─そんなとき、食物アレルギーかもしれないと不安になる親御さんは少なくありません。

発症率は乳幼児で約5~8%とされ、決して珍しいものではないからこそ、正しい知識と日常での工夫が安心につながります。

この記事では、アレルギーの仕組みや症状、家庭でできる対応を整理しました。

なぜ子どもに多いの?食物アレルギーのしくみ

食物アレルギーは、体の免疫が食品中のタンパク質を「敵」と誤って判断し、過剰に反応することで起こります。

乳幼児は免疫機能や消化機能がまだ未熟なため、大人に比べて反応が出やすいのです。

特に卵・牛乳・小麦は乳幼児に多いアレルゲン。一方で、えびやかになどは学童期以降に増えていく傾向があります。

どんな症状が出るの?注意すべきサイン

症状は食後30分〜2時間以内に出る「即時型」が多く、代表的なのは以下です。

  • 皮膚:じんましん、赤み、かゆみ
  • 消化器:嘔吐、下痢、腹痛
  • 呼吸器:せき、ぜーぜーとした呼吸

特に、顔の腫れ・声のかすれ・呼吸のしづらさ はアナフィラキシーの危険サインです。迷わず救急要請してください。

一方、数時間〜数日後に湿疹や下痢が続く「遅延型」もあり、原因の特定が難しいこともあります。

家庭でできる3つの対応

1. 食べたもの日記をつける

「何をどれくらい食べて、いつどんな症状が出たか」を記録しておくと、医師に相談するときの大きな手がかりになります。

2. 食品表示を確認する習慣をつける

加工食品にはアレルゲン表示が義務付けられています。卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生、くるみの8品目が「特定原材料」として表示義務があり、アーモンドやマカダミアナッツを含む20品目が「表示が推奨される対象(特定原材料に準ずるもの)」です。

表示は「一部に○○を含む」と記載されるため、最後まで確認するようにしましょう。

3. 初めての食材は少量から試す

離乳食期や新しい食品を与えるときは、平日の午前中など、すぐに受診できる時間帯に少量から始めましょう。症状が出たときに備えておくことが安心につながります。

成長とともに変わる可能性も

卵・牛乳・小麦は成長に伴い改善しやすい一方、そば・落花生・甲殻類は持続しやすいことが知られています(日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2020」ほか、厚労科研調査・国立成育医療研究センター報告より)。

食品改善しやすさ主な傾向・ポイント
改善しやすい乳幼児期に発症が多いが、成長とともに耐性を獲得しやすい。小学校入学前までに約半数前後が改善。加熱卵から段階的に食べられるようになるケースも多い。
牛乳改善しやすい乳児期に発症しやすいが、小学校高学年までに約7割前後が摂取可能になると報告あり。発酵・加熱を経たヨーグルトやチーズなどの加工品から取り入れられる場合もある。
小麦改善しやすい学童期までに6〜7割が改善とされる。体調や調理法によって摂取できる量が変わることがあり、少量から試すケースも多い。
そば改善しにくい改善しにくく、大人になっても続くことが多い。ごく微量でも強い症状が出ることがあり、特に外食時は注意が必要。
落花生改善しにくい持続しやすく、生涯にわたり反応が続くケースが多い。微量摂取でも重症化することがあるため、完全除去が基本。
甲殻類(えび・かに)改善しにくい学童期以降や成人での発症が多く、改善しにくいタイプ。加工品や調理器具からの混入にも注意が必要。

医師の管理のもとでの確認が大切

「治るかどうか」を見極めるには、自己判断ではなく医師の管理下で行う「食物経口負荷試験」が必要です。

最近は「完全除去」よりも「食べられる範囲を安全に広げる」方針にシフトしており、少しずつでも摂取できるようになると栄養面・生活面でのメリットが大きくなります。

医療機関に相談すべきタイミング

  • 繰り返し同じ症状が出る
  • 少量でも強い反応が起きた
  • 呼吸や意識に関わる症状が出た

こうした場合は、自己判断せず必ず小児科やアレルギー科を受診しましょう。必要に応じて血液検査や食物経口負荷試験で正確な診断が行われます。

正しい知識が子どもを守る第一歩

食物アレルギーは特別なことではなく、正しい知識を持てば安心して付き合えるものです。

まずは「食べたもの日記」と「表示チェック」という2つの習慣から始めてみましょう。そして、不安なときは一人で抱え込まず、医師に相談することが一番の安心につながります。

子どもの“食べる楽しみ”を守るために、できることから実践していきましょう。

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この記事の監修者

管理栄養士・料理家

ひろのさおり

お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。