2025.09.13
飲んだ後にラーメンが食べたくなるのはなぜ?「締め」の正体と上手な付き合い方
働く人と食の健康
栄養の基本
飲み会の帰り道、駅前のラーメン屋から漂う豚骨の香り。「今日は絶対やめておこう」と思っていたのに、気づけば暖簾をくぐっている──そんな経験、ありませんか。
翌朝、むくんだ顔と重たい胃を抱えて「やっぱり食べなければよかった」と後悔するまでがセット。それでも次の飲み会では、同じことを繰り返してしまう方も多いのではないでしょうか。
実は、これは単なる意志の弱さではありません。お酒を飲んだあとに炭水化物が欲しくなるのは、体の仕組みからくる自然な反応です。仕組みを知っておくと、締めとの付き合い方も変わってきます。
ここでは、「締めが欲しくなる理由」を整理しながら、翌朝後悔しないための工夫をご紹介します。
お酒を飲むと炭水化物が欲しくなる理由
飲み会のあとに締めを食べたくなる背景には、いくつかの生理的なメカニズムが関係しています。
アルコールが血糖値を下げている
アルコールが体内に入ると、肝臓はその分解を最優先で行います。すると、普段は糖をつくり出している機能(糖新生)が抑えられ、血糖値が下がりやすくなります。
脳は血糖値の低下を「エネルギー不足」と判断するため、「何か甘いもの、炭水化物が欲しい」という信号を出してきます。締めにラーメンやお茶漬けが選ばれやすいのは、体が効率よく血糖値を上げられる食べ物を本能的に求めているからなのです。
満腹ホルモンの働きが弱まっている
もうひとつの要因は、レプチンという満腹ホルモンの分泌が抑えられることです。レプチンは「もう十分食べた」というサインを脳に送る役割を担っていますが、アルコールを摂取するとその分泌が減少します。
そのため、実際にはお腹が空いていなくても「何か食べたい」という感覚だけが残りやすくなるのです。
炭水化物は即効性のあるエネルギー源
ごはんや麺類などの炭水化物は、血糖値をすばやく上げられる食材の代表格です。アルコールで血糖値が下がっている状態で、体は本能的に「効率の良いエネルギー」を求めます。
締めにラーメンやおにぎりが定番になりやすいのは、体が炭水化物の即効性を知っているからともいえます。
深夜のラーメンが翌日に響く理由
飲んだ後のラーメンは、その瞬間は最高においしく感じます。でも翌朝、むくんだ顔や重たい胃を前に「やっぱり食べなければよかった」と後悔した経験も多いのではないでしょうか。
カロリーの積み重ねが大きい
ビールやワインなどのアルコールは、1gあたり約7kcalのエネルギーを持っています。飲み会で3〜4杯飲めば、それだけで300〜500kcal近くになることも珍しくありません。
そこにラーメン1杯(500〜700kcal)が加わると、締めだけで1食分を超えるエネルギー摂取になります。深夜という時間帯も重なり、消費されにくいまま体に蓄積されやすいのです。
むくみが出やすくなる
アルコールには利尿作用があるため、飲んでいる最中は体内の水分が失われがちです。その脱水気味の状態で塩分の多いラーメンを食べると、体は水分を取り戻そうとしてため込みモードに入ります。
翌朝の顔や手足のむくみは、このメカニズムが原因です。特にスープまで飲み干すと、塩分摂取量が一気に増えてむくみが強く出やすくなります。
睡眠の質が下がりやすい
深夜に消化に時間がかかる食事をとると、胃腸が活発に働き続けるため、眠りが浅くなりがちです。アルコール自体も睡眠の質を下げる要因になるため、ダブルパンチで翌日のだるさにつながります。
「締め欲」と上手に付き合うコツ
締めを食べたくなる気持ちをゼロにするのは難しいもの。むしろ、「欲求が出にくい飲み方」と「食べるときの選び方」を工夫するほうが現実的です。
飲み始めにたんぱく質をとっておく
飲み会の序盤で、枝豆や冷奴、刺身などのたんぱく質を食べておくと、血糖値の急激な変動を抑えやすくなります。たんぱく質は消化に時間がかかるため、アルコールの吸収も穏やかになり、酔いのペースも落ち着きます。
血糖値が安定していれば、締めへの強い欲求も和らぎやすくなります。
お酒の合間に水を挟む
ビールやハイボールの合間にチェイサー(水や炭酸水)を挟むことで、アルコールの代謝がスムーズになり、脱水を防げます。脱水が軽減されれば、塩分を強く欲する気持ちも落ち着きやすくなります。
「お酒1杯につき水1杯」を目安にすると、翌日の頭痛やだるさの軽減にもつながります。
「食べる」と決めたら量と種類を調整する
我慢しすぎてストレスをためるより、「今日は食べる」と決めて選び方を工夫するほうが健全な場合もあります。その際は、少量であっさりめのものを選ぶのがポイントです。
誰かとシェアするのもおすすめです。ひとりで1杯食べきるより、半分ずつ分ければ満足感を得ながらカロリーを抑えられます。
翌日に響きにくい締めの選び方
どうしても締めが欲しいとき、何を選ぶかで翌日の体調は大きく変わります。体にやさしい選択肢をいくつか知っておくと、罪悪感なく楽しめます。
お茶漬けは満足感と軽さを両立しやすい
ごはん少なめに温かい出汁をかけたお茶漬けは、旨味で満足感を得やすく、胃への負担も軽めです。塩鮭や梅干しなど具材を選べば、塩分もコントロールしやすくなります。
冷たいうどんは消化にやさしい
冷やしうどんにねぎや大根おろしを添えると、さっぱりしていて消化もスムーズです。温かいラーメンより胃に残りにくく、翌朝の重さを感じにくい組み合わせといえます。
おにぎりという選択肢もある
コンビニで手に入るおにぎりも、実は優秀な締め候補です。ラーメンと比べてカロリーが控えめで、塩分も調整しやすいのがメリット。鮭やおかか、梅など具材を選べるのもポイントです。
温かい味噌汁やスープと組み合わせれば、満足感を保ちながら胃への負担を抑えられます。
ラーメンを選ぶならシンプルに
どうしてもラーメンが食べたいときは、塩や醤油ベースのあっさり系を選び、スープは残すようにしましょう。こってり系や背脂マシマシは、翌日のむくみと胃もたれを覚悟する必要があります。
締めが欲しくなるのは自然なこと
飲み会のあとに「何か食べたい」と感じるのは、血糖値の低下とホルモンバランスの変化による自然な反応です。意志の弱さのせいではありません。
大切なのは、その仕組みを理解したうえで、飲み方や締めの選び方を少し工夫すること。「絶対に食べない」と無理に我慢するよりも、「食べるならこう選ぶ」という引き出しを持っておくほうが、長い目で見て体にやさしい付き合い方ができます。
次の飲み会では、序盤にたんぱく質をとること、水をこまめに挟むことを試してみてください。締めを食べるとしても、お茶漬けやうどんなど軽めのものを選ぶだけで、翌朝の体調はずいぶん変わってきます。
“締め欲”と上手に付き合いながら、飲み会も翌日も気持ちよく過ごせるといいですね。
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この記事の監修者
管理栄養士・料理家
ひろのさおり
お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。