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2025.08.12

骨と免疫を支える栄養素 ―ビタミンDの健康効果と賢い摂り方

栄養の基本

骨と免疫を支える栄養素 ―ビタミンDの健康効果と賢い摂り方

「カルシウムは大事」とよく聞きますが、それを生かすために欠かせないのがビタミンDです。ビタミンDは骨を強くするだけでなく、免疫機能や筋肉の働きにも関わる栄養素として注目されています。

現代人は紫外線対策や生活習慣の影響で不足しやすいため、日常的に意識したいポイントを整理してみましょう。

ビタミンDの基本を知ろう

体づくりの基盤を支えるビタミンD。聞いたことはあっても、どんな働きがあるのかを正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。

まずはその基本をおさらいしてみましょう。

カルシウムの吸収を助ける

ビタミンDは、カルシウムを“使える形”にして体に届けるサポーターのような存在です。腸での吸収を助けることで、カルシウムが骨や歯にしっかり取り込まれるように働きます。

不足すると、せっかくカルシウムを摂っても体がうまく利用できず、血中濃度を保つために骨からカルシウムが溶け出してしまうことも。その結果、骨密度の低下や骨粗しょう症のリスクにつながります。

カルシウムとビタミンDは「セット」で働く栄養素。どちらか一方だけでは十分な効果が得られないのです。

2つの種類がある

ビタミンDには、植物由来の「D₂(エルゴカルシフェロール)」と動物性食品に多い「D₃(コレカルシフェロール)」の2種類があります。

きのこ類に含まれるのがD₂、魚や卵、乳製品などに多いのがD₃です。

どちらも体内で活性型ビタミンDに変換されますが、D₃の方が吸収率・利用効率ともに高いとされています。
そのため、食事から摂る際は魚や卵などD₃を含む食品を中心にすると効率的です。

“日光+食事”でつくられる

ビタミンDの大きな特徴は、日光を浴びることで体の中でも合成できること。皮膚が紫外線を受けると、コレステロールの一種からビタミンDが作られます。

ただし、日焼け止めや屋内中心の生活で日光を浴びる機会が少ない人は、不足しやすくなります。1日10〜20分ほどの散歩や窓際の日差しでも十分な補給源になりますが、季節や地域によって差があるため、食事からの摂取も欠かせません。

食卓と太陽の“ダブルアプローチ”が、健康を支える鍵になります。

骨だけじゃない!ビタミンDの健康効果

ビタミンDの役割は、骨の健康だけにとどまりません。体のさまざまな機能を支える“縁の下の力持ち”として働いています。

1. 骨粗しょう症予防

ビタミンDはカルシウムと協力して、骨のリモデリング(新陳代謝)を支えます。十分な量があれば、骨の強度を維持し、骨折リスクを下げる効果が期待できます。

特に高齢期や閉経後の女性では、カルシウムとともに意識したい栄養素です。

2. 筋力維持・転倒予防

筋肉細胞にもビタミンDの受容体が存在し、筋肉の収縮やバランス能力の維持に関与しています。
不足すると、筋力低下や反応速度の低下につながることが分かっています。

研究では、血中ビタミンD濃度が高い人ほど転倒リスクが低いとされており、高齢者のフレイル(虚弱)予防にも役立つと注目されています。

3. 免疫機能の調整

ビタミンDは、免疫細胞の働きを“整える”役割を担っています。体の防御反応を高めつつ、過剰な炎症反応を抑えることで、バランスの取れた免疫状態を保ちます。

研究では、ビタミンDの十分な摂取が風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症の予防に寄与する可能性が報告されています(Martineau et al., BMJ, 2017)。
感染症が流行しやすい季節には、意識して摂りたい栄養素です。

4. 糖尿病リスクの軽減

近年の研究では、ビタミンDがインスリンの分泌や働きに関与していることも明らかになっています。血糖コントロールを助け、2型糖尿病の発症リスクを下げる可能性が示唆されています。

ただし、食事や運動などの生活習慣と組み合わせることが重要です。

(参考:厚生労働省『日本人の食事摂取基準2025年版』)

すぐできる!ビタミンDを増やすおすすめ食習慣

「難しそう」と思われがちですが、ちょっとした工夫でビタミンDはしっかり摂れます。日常の食卓で取り入れやすいポイントを紹介します。

「干しキノコ」は常備菜に

シイタケやマイタケなどのキノコは、天日干しするとビタミンD量が数倍に増加します。戻して使えば旨みもアップ。味噌汁や炊き込みご飯、炒め物などに加えるのがおすすめです。

「干して保存」することで日持ちもよく、毎日の献立に取り入れやすい万能食材です。

「魚+カルシウム食材」でW効果

鮭やサンマ、サバなどの青魚にはD₃が豊富。これに牛乳や小松菜、チーズなどカルシウムを多く含む食材を合わせると、吸収と利用の両面からサポートできます。

焼き魚に小松菜のおひたしを添えるなど、普段の食卓でも簡単に実践できます。

「油と一緒に」調理する

ビタミンDは脂溶性ビタミン。油と一緒に摂ることで吸収率が高まり、体にしっかり取り込まれます。

オリーブオイルでキノコを炒めたり、サーモンをオイル漬けにするなど、“油を味方にする”工夫がポイントです。

サプリメント選びで注意したいポイント

食事で不足しがちな場合、サプリメントも選択肢です。ただし量や種類には注意が必要です。

  • 成人の目安は1日5.5μg程度。過剰摂取は避けましょう
  • D₃タイプの方が利用効率が高め
  • カルシウムやビタミンKと一緒になった製品は便利ですが、併用による摂りすぎに注意が必要です

ビタミンDで守る、骨と免疫の健康習慣

ビタミンDは、日光を浴びることに加えて、食事・油・カルシウムと組み合わせることで効率よく働きます。
特別な工夫は必要なく、普段の食卓に少し意識を加えるだけで、骨と免疫を一緒に守る体づくりにつながります。