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2025.08.08

干ししいたけの戻し方で、料理の味が変わる。旨味を引き出す温度と時間の話

調理と保存のコツ

干ししいたけの戻し方で、料理の味が変わる。旨味を引き出す温度と時間の話

煮物や炊き込みご飯に欠かせない干ししいたけ。でも、いざ使おうとすると「まだ芯が硬い」「急いでお湯で戻したら風味がイマイチだった」なんて経験はありませんか。

実は、干ししいたけの戻し方には、旨味を最大限に引き出すコツがあります。ポイントは温度と時間。この2つを意識するだけで、同じ干ししいたけでも仕上がりがぐっと変わります。

ここでは、干ししいたけの旨味が生まれる仕組みから、忙しい日でも取り入れやすい戻し方、そして戻し汁の活用法まで、管理栄養士の視点で整理してお伝えします。

干ししいたけの旨味はどこから来るのか

干ししいたけ特有の深いコクと香り。その正体はグアニル酸という旨味成分です。

グアニル酸は、昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸と並ぶ「三大旨味成分」のひとつ。これらを組み合わせると旨味が何倍にも膨らむことから、和食では昆布×かつお節×干ししいたけの合わせだしが重宝されてきました。

ただし、このグアニル酸、最初から干ししいたけに含まれているわけではありません。戻す過程で、しいたけの中にあるリボ核酸が酵素の働きによって分解され、グアニル酸へと変化します。

つまり、戻し方次第で旨味の量が変わるということ。ここが干ししいたけを上手に使いこなすカギになります。

高温で戻すと旨味が逃げてしまう理由

急いでいるときは、熱湯で干ししいたけを戻したくなりますよね。でも、旨味を重視するなら高温は避けたいところです。

干ししいたけの中では、2種類の酵素が働いています。

ひとつは、リボ核酸をグアニル酸に変える生成酵素(ヌクレアーゼ)。もうひとつは、せっかく生まれたグアニル酸を分解してしまう分解酵素(ホスファターゼ)です。

生成酵素は低温でも安定して働きますが、分解酵素は高温になると活発化してしまいます。つまり、熱いお湯で戻すと、旨味が生まれるそばから壊れていくという困った状態に。

これが「お湯で戻すと味がぼやける」と言われる理由です。

冷水でじっくり戻すと旨味が増える仕組み

では、どうすれば旨味を最大限に引き出せるのでしょうか。

答えは、冷蔵庫で冷水に浸けてゆっくり戻すこと。5℃前後の低温環境なら、生成酵素がしっかり働き、分解酵素の活性は抑えられます。

時間の目安は5時間程度。これより短いと戻りが不十分で、長すぎても旨味が増え続けるわけではなく、かえって風味が落ちることもあります。

夜寝る前に仕込んでおけば、朝には使える状態に。朝セットすれば、夕食の準備にちょうど間に合います。冷蔵庫に入れておくだけなので、特別な手間はかかりません。

旨味を逃さない戻し方の手順

実際の戻し方を、順を追って見ていきましょう。

まず、干ししいたけと水を保存袋や密閉容器に入れます。水の量は、しいたけがしっかり浸かる程度。保存袋を使う場合は、空気をできるだけ抜いて密閉すると、しいたけが水に触れやすくなり、戻りが早まります。

次に、冷蔵庫に入れて5時間ほど置きます。野菜室でも構いません。途中で一度取り出して、石づきの硬い部分を切り落とすと、さらに吸水が促進されます。

戻し終わったら、しいたけを取り出し、軽く絞って使います。戻し汁は捨てずにとっておきましょう。ここに旨味がたっぷり溶け出しています。

戻し汁は“天然のだし”として活用する

干ししいたけを戻した汁には、グアニル酸をはじめとする旨味成分が凝縮されています。これを捨ててしまうのは、もったいない話です。

煮物や炊き込みご飯の煮汁として使えば、味に奥行きが生まれます。味噌汁やスープのベースにしても、いつもとは違う深みのある仕上がりに。中華風の炒め物や餃子の餡に少し加えると、コクが増して満足感のある一皿になります。

ただし、戻し汁をそのまま全量使うと、しいたけの風味が強くなりすぎることもあります。料理に合わせて、全体の1/3〜1/2程度を目安に調整すると、バランスよくまとまります。

残った戻し汁は、製氷皿で小分けにして冷凍しておくと便利です。使いたいときに必要な分だけ取り出せるので、無駄なく活用できます。冷凍した戻し汁は1か月ほど保存可能。いつもの料理にさっと加えるだけで、味の底上げができます。

急いでいるときはどうすればいい?

とはいえ、「今日の夕食に使いたいのに、5時間も待てない」という場面もありますよね。

そんなときは、ぬるま湯(20〜30℃程度)で戻す方法があります。完全な冷水戻しほどではありませんが、熱湯よりは旨味を残しやすく、1〜2時間で戻すことができます。

どうしても時間がないときは、干ししいたけを薄くスライスしてから水に浸けると、戻り時間を短縮できます。また、電子レンジで軽く加熱する方法もありますが、旨味の面では冷水戻しにはかないません。

理想は冷水で5時間ですが、状況に応じて使い分けてみてください。週末の煮込み料理には冷水戻し、平日の時短メニューにはぬるま湯戻しと、場面で切り替えるのもひとつの方法です。

おいしい干ししいたけの選び方

戻し方と同じくらい大切なのが、干ししいたけ選びです。

品質の良いものを見分けるポイントは3つあります。

ひとつ目は肉厚であること。厚みがあるものほど、戻したときにふっくらとした食感が楽しめます。

ふたつ目はカサの裏が白っぽいこと。茶色く変色しているものは、鮮度が落ちている可能性があります。

みっつ目は表面にひび割れ(亀甲模様)があること。これは“冬菇(どんこ)”と呼ばれる高級品に見られる特徴で、寒い時期にゆっくり育ったしいたけほど、旨味が凝縮されています。

カットされた干ししいたけも、同じように冷水でじっくり戻せばおいしく仕上がります。丸ごとよりも早く戻るので、時間がないときは使い分けてみてください。

戻した干ししいたけの保存方法

一度に使い切れない場合は、戻した状態で冷凍保存ができます。

水気を軽く絞り、使いやすい大きさに切ってから、ラップで包んで冷凍庫へ。保存期間の目安は約1か月です。

凍ったまま煮物や炒め物に加えてOK。あらかじめ戻しておけば、忙しい日でもすぐに使えて重宝します。

戻し方ひとつで、料理の味わいが変わる

干ししいたけは、戻し方次第で旨味の出方がまったく違ってきます。

冷蔵庫でゆっくり5時間。これだけで、香りも味わいもワンランク上の仕上がりに。戻し汁まで活用すれば、だしの素いらずで奥深い味が生まれます。

次に干ししいたけを使うときは、前日の夜にさっと仕込んでおくことから始めてみませんか。朝起きたときには、おいしい準備が整っているはずです。

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この記事の監修者

管理栄養士・料理家

ひろのさおり

お茶の水女子大学大学院在学中、フリーランスとして管理栄養士のキャリアをスタート。レシピ開発や執筆業、出張料理サービスに携わり、特定保健指導、セミナー・料理教室講師としても活動を広げる。現在は株式会社セイボリーの代表を務め、レシピ開発・料理撮影や、調理器具や食品の監修・販促サポートなどの事業を営む。テレビ出演などのメディア実績も多数。著書に「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)。